研究課題/領域番号 |
24243079
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 俊和 筑波大学, 人間系, 教授 (40200208)
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研究分担者 |
河内 清彦 筑波大学, 特命教授 (50251004)
柿澤 敏文 筑波大学, 人間系, 教授 (80211837)
徳竹 忠司 筑波大学, 人間系, 講師 (80251007)
浜田 淳 筑波大学, 人間系, 講師 (80261767)
和田 恒彦 筑波大学, 人間系, 准教授 (70438993)
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研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2016-03-31
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キーワード | 理療科教育 / 特別支援教育 / 視覚障害者 / 鍼灸マッサージ / IT |
研究概要 |
1.理療科教員養成の成立と歴史的経緯に関する研究:明治以降の我が国における盲学校理療科教員養成の歴史的変遷をまとめた「筑波大学理療科教員養成施設創立百十周年記念誌」を編纂するとともに、シンポジウムで講演した。また、官報に掲載された盲学校関連記事を「理療教育研究」に掲載した。2.視覚障害学生の鍼臨床授業評価に関する研究:理療科教員養成施設学生を対象とした調査では、拡大・点字教材使用者では実技実習を行う上での情報困難さが指摘され、電子黒板やiPadなどのタブレット端末の利用や模型教材の効率的活用が示唆された(日本特殊教育学会発表)。講義形式授業においては、視覚障害者に配慮したパワーポントの検討が指摘された。3.視覚障害学生の刺鍼技術に関する研究:盲学校理療科に在籍する生徒を対象に、刺鍼深度の正確さ向上に向けた刺鍼練習台による反復練習を行った結果、刺鍼深度の誤差を小さくするとともに刺鍼時間を短縮させた。視覚障害者鍼師の刺鍼操作分析では、視力が低下するほど刺鍼部位を決定する時間は増大する傾向がみられたが、その他の鍼操作では差が見られなかった(全日本鍼灸学会演題登録済)。4.鍼灸マッサージの臨床効果に関する研究:①鍼受療者が多い骨格筋損傷の奏功機序について、日本生理学会のシンポジウムで発表した。②鍼灸師の手指の衛生操作に関連する要因の研究では、手洗いの実施は年齢が若いことと1日の患者数が多いことでおろそかになることがわかった(全日本鍼灸学会雑誌掲載)。③鍼治療で最も多く扱う腰痛に対する体幹筋群の筋反応時間を検討した結果、健常者では鍼通電刺激は身体動揺時の体幹筋群の筋反応時間に影響を与えないことがわかった(日本東洋医学系物理療法学会誌)。圧迫法が下腿三頭筋の柔軟性に及ぼす影響を検討した結果、1秒圧迫が20秒圧迫より効果があることがわかった(日本東洋医学系物理療法学会誌)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.現在まで、鍼臨床能力に関する研究は、視覚障害学生・生徒の基本的刺鍼操作と視覚障害の程度との関係を検討して来た。今後は、低周波鍼通電療法などのより臨床に即した治療法で、視覚障害学生の臨床能力を検討して行く。2.ITを活用した授業実践等の研究は、本年度は活用前の学生による評価を行って来たが、来年度および再来年度に実施した授業と比較するため、研究成果がでるまでには、時間を要する。3.鍼灸マッサージの臨床効果に関する研究も、治療に要する累積効果や治療効果の継続性を評価するために、成果発表までに時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
1.理療科教育におけるIT活用に関する研究 1)特別支援教育におけるIT活用に関する文献研究:特別支援教育におけるIT活用の研究の中で、視覚障害教育や理療教育の占める割合と授業実践例についてまとめる。2)盲学校理療科教員のIT活用の実態調査:全国の盲学校理療科教員を対象に、授業におけるIT活用の実態をに調査を行う。 2.理療科教育におけるITを活用の授業実践に関する研究 理療科教員養成施設(90%が視覚障害学生)の鍼灸関連授業で、80インチの電子黒板の画面を弱視学生全員のiPadに転送する学習システムを利用すると共に、全盲者には模型教材や点字資料を活用するなど1クラス20名の視覚障害学生を対象とした授業で、個々のニーズに合わせた授業法を構築して、学生による授業評価を行う。 3.視覚障害学生の鍼臨床能力に関する研究 1)刺鍼の深さの修得に関する研究:盲学校理療科の生徒を対象に、鍼刺入時の鍼の深さを正確に判別できる能力を修得する教育プログラムを作成し、教育効果を検証する。2)低周波鍼通電療法(EAT)の操作性に関する研究:鍼臨床に広く用いられているEATを視覚障害学生が行う上での問題点とその解決法を研究する。 3)視覚障害学生の手指の巧緻性と刺鍼操作に関する研究:鍼灸師免許を有する者および鍼灸師免許取得のために学習する学生を対象に、ペグボードやIT機器を用いて、手指の巧緻性と鍼臨床能力の関連を研究する。 4.鍼灸マッサージの治療効果に関する研究 1)生活不活発病に関するマッサージの効果:東日本大震災の仮設住宅居住者を対象にマッサージの効果を、筋力、筋柔軟性、重心動揺などを指標に検討する。2)退行性変化を有する高齢者の膝痛・腰痛などを対象に、鍼治療効果を検討すると共に鍼の利用実態に関する研究を行う。3)視覚障害者アスリートに対する鍼灸マッサージによる競技支援に関する研究を行う。
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