研究課題/領域番号 |
24244001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
寺尾 宏明 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90119058)
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研究分担者 |
吉永 正彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90467647)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 代数的組合せ論 / 超平面配置 |
研究実績の概要 |
本研究計画の主題は,(A)結晶配置・鏡映配置・シー配置・カタラン配置等の代数的・幾何的研究,(B)複素数の重み付き多重超平面配置に付随する局所系コホモロジーの研究,そして,(C)超平面配置の自由性についての研究,特にいわゆる「寺尾予想(TC)」の決着に向けての研究,この3つである.26年度には,以下のふたつの実績が得られた.
1. 厳しいレフェリー審査により講演者が選別される「形式冪級数・代数的組合せ論国際会議」の第26回大会は,26年夏,米国シカゴで行われた.私は講演による情報発信のみならず,積極的な情報収集を行った.私の次の講演者のWilliam Slofstra(カリフォルニア大学デイヴィス校)は,Abe-Barakat-Cuntz-Hoge-Terao(ABCHT)の最新の結果(J. Euro. Math. Soc. 掲載予定)に立脚した定理を述べた.それは,ABCHTにおける結晶配置のイデアルを逆順集合で置き換えた定理であった.驚いた私は,講演後ただちに,Sloftraと情報交換・議論することによって,互いから学ぶことができた.そして,両者の結果を併せることにより,(TC)が成立する超平面配置のクラスを大きく広げることができた.これは(C)と(A)に関する著しい成果である(準備中).SlofstraによるPeterson translation の手法は,今後も,本研究課題に大きく寄与するであろう.なお,講演の記録は,すでに出版されている.
2. 研究分担者である吉永正彦は,論文"Worpitzky partitions for root systems and characteristic quasi-polynomials"(投稿中)において,結晶配置のカタラン配置の擬特性多項式を調べることによって,(A)の研究対象であるカタラン配置に関する知見を進展させた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の「研究実績の概要」の中の3つの目標 (A) (B) (C)に関する進展は,それぞれ以下のとおりである. (A)上記の「研究実績の概要」の 1. において,ワイル配置の部分配置の自由性に関する知見が大きく進展した.ワイル配置の自由部分配置については,完全理解に接近していると考えている.また,「研究実績の概要」の 2. に示された研究分担者の吉永正彦の上記論文は,いわゆる「(スタンレーによる)組合せ的リーマン予想」に肉薄する結果である.計画を大きく上回る進展である. (B)残念ながら,実施的進展は無かった. (C)最近の研究で,(TC)の成立する例として,Multiple Addition Theorem (多重加法定理)によって構成可能な配置,シー・イデアル配置などが一挙に加わることになった.すなわち,予想を越えて大きく進展したと言え,(TC)が正しい可能性が高まっているように感じる. 全体としては,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
26年度の研究活動を通じて,研究目的 (A) の研究対象の結晶配置・鏡映配置・シー配置・カタラン配置等をより徹底的に調べることが,研究目的 (C) における (TC) の解決に寄与するのではないか,と思うようになった.具体的な例を多く調べることにより反例を得るという可能性がある,という意味もあるが,むしろ,これらの超平面配置を徹底的に調べることによって,すべての超平面配置に通用する一般的結果を得ることにつながるのではないか,そして,そのような一般的な結果を用いて,(TC) を肯定的に決着することができるのではないか.そのひとつの原始的な例が多重加法定理であろう.27年度は,このような方向に研究を推進したい. 本研究計画には参加していないが,常に連絡を取り合っている研究協力者の阿部拓郎(京都大)のごく最近(2015年4月)の結果 Division Free Theorem (除法自由定理)は,画期的な定理であり,(TC) の肯定的解決に向けて希望を持たせる結果である.27年度は,除法自由定理をさらに改良する試みを行いたい.
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