研究課題/領域番号 |
24244001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
寺尾 宏明 北海道大学, 国際本部, 特任教授 (90119058)
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研究分担者 |
吉永 正彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90467647)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 代数的組合せ論 / 超平面配置 |
研究実績の概要 |
本研究計画の主題は,以下の3つである.すなわち,(A) 結晶配置・鏡映配置・シー配置・カタラン配置等の代数的・幾何的研究,(B) 複素数の重み付き多重超平面配置に付随する局所系コホモロジーの研究,そして,(C) 超平面配置の自由性についての研究,特にいわゆる「寺尾予想(TC)」の決着に向けての研究である.27年度には,以下の3つの実績が得られた. 1.昨年度末、ワイル配置の制限に関して、正ルートの高さ分布と(自由配置の)指数との間に、双対分割関係が成立しているという著しい発見があった(阿部-寺尾)。そこでは、MATとその拡張、MDT, MRTの樹立とワイル配置の制限への応用が証明の鍵になる。これはワイル配置に関する強力な結果であり、また、組み合わせ自由性に関する結果でもあり、その意味で(C)と(A)の両方に関係する成果であるとも言えよう。現在、論文執筆中である。 2.Schenck-Terao-Yoshinaga (Math.Res.Letters (2016)) 本論文は、研究分担者の吉永正彦(京都大・理)と Hal Schenck(米・イリノイ大教授)との共著であり、射影直線配置を拡張した対象である射影平面曲線配置の研究である。射影平面曲線配置の自由性が組み合わせ的に決まるか、という問題は、いわゆるZariskiの問題の精神と通底する問題であり、その意味で、目標(C)と密接に関連する研究実績である。 3.Torielli-Yoshinaga (J. of Singularities, (2015)) 本論文は、吉永正彦とMichele Torielli(北大・理)との共著である。主定理として、実曲線配置の補集合上の局所係数コホモロジーの resonant variety については、4-nets が存在しないことを示した。これは、目標(B)の達成に向けた大きな実績といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標(A)については、ワイル配置の部分イデアル配置がすべて自由配置であるのみならず、その正ルートの高さ分布と自由配置としての指数との間に、双対分割と言う美しい関係があるという結果(阿部拓郎-Barakat-Cuntz-Hoge-寺尾宏明(J. Euro. Math. Soc. 2015)から始まった。そのために自ら開発した手法は、すでにその後の研究に有効に使われており、ブレイクスルーが起きたと考えている。予想を上回る進展があったことに疑いはない。 目標(B)については、残念ながら26年度まではさしたる結果がなく、目標(A)に比べて出遅れていたことは否めない。しかし、上記のように吉永正彦とMichele Torielliの成果が得られたことで面目を保っている。しかし、今後の一層の進展が望まれる。 目標(C)についてのこの時点での進展評価は難しい。いわゆる寺尾予想の正否を目標としているので、最終年度である今年度にすべてがかかっている。最終年度の推進方策については、下記を参照して欲しい。最終年度の戦略としてOA(楽観的アプローチ)を採用するに至ったのは、ひとえにこれまでのエビデンスの着実な積み重ねに依ることを考えて、ここまでの進展を満足すべきものと自己評価する。
以上(A)(B)(C)を総合して、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
目標(A)については、今年度は対象を広げて、空配置とアフィン・ワイル配置を結ぶ超平面配置の自由フィルトレーションを研究対象とする。その際、多重加法定理(MAT)とその精密化に加え、多重削除定理(MDT)と多重制限定理(MRT)を縦横に適用することから開始する予定であり、これらの話題の若手専門家である阿部拓郎(九大IMI研究所)との議論を中心に研究を推進する。
目標(B)については、今年度は、H型とI型を含むすべてのコクセター配置を研究対象に据え、その計算結果、特に、K-Z方程式の対応物の数学的、あるいは、物理学的意味付けは非常に興味ある課題となろう。また、今年度の8月に予定されている Summer Conference on Hyperplane Arrangements (SCHA) in Sapporo のために集合するこの分野の世界的な研究者の講演から学び、現在の最先端の課題の理解を深めるとともに、その課題解決に向かって研究を推進する計画である。
目標(C)については、解決したい予想(TC)の正しさをサポートする複数の材料が昨年度までに提出された。超平面配置がCFであるとは、その超平面配置の交叉半順序集合と同型な交叉半順序集合をもつ超平面配置が常に自由になることを言う。するとTCは「CFと自由性が同値である」と言い換えることができる。多くの重要例(ワイル配置のイデアル部分配置など)がCFであることはすでに知られている。最終年度は、この予想を肯定的に解決することを目指すOA(楽観的アプローチ)を採用する計画であり、そのための武器として、阿部拓郎によるdivisionally free theorem(2016)を改良することから始める予定である。今年度は、この目標(C)を、本研究課題の中心の目標と位置付けて強力に研究を推進したい。
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