研究課題/領域番号 |
24244002
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今野 一宏 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10186869)
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研究分担者 |
徳永 浩雄 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30211395)
足利 正 東北学院大学, 工学部, 教授 (90125203)
大渕 朗 徳島大学, その他の研究科, 教授 (10211111)
臼井 三平 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90117002)
小木曽 啓示 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40224133)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 代数曲線束 / 特異ファイバー / モーデル・ヴェイユ格子 |
研究概要 |
代数曲線束をもつ非特異射影代数曲面を主な研究対象として,その垂直方向・水平方向の曲線の研究を文字通りの縦糸・横糸として,射影代数曲面の幾何構造を多角的に研究した.研究代表者や分担者によって得られた研究成果は以下の通りである. まず,垂直方向の曲線に関する成果を述べる.超楕円曲線束の特異ファイバーの構成に自然に現れる正規2重点について,特異点の不変量に対するスロープ不等式を確立し,2重点に対するダーフィー予想の別証明を与えた.また,リーマン面の退化ファイバー芽に対して符号不足数なる概念を定義し考察したが, その際本質的に用いた「Dedekind和の相互律」を今回非常に一般な形に拡張し, その成果をプレプリントとしてまとめた.春井岳による平面曲線の自己同型群の分類において,ガロア点と関連する場合の最大位数を与える曲線の一部を特徴付けた. 水平方向の曲線については次の通りである.楕円曲面の切断及び2重切断の幾何学を研究して,これをGalois被覆の構成問題を研究した.その応用として既約成分が2次曲線のみからなるZariski N 組の構成した.さらに,射影平面とその上の曲線のペアに関するトポロジーについてGalois分岐被覆を用いた新たな不変量の定式を与えた.その他にも次のような研究を行った.Picard数が2である広い意味の射影カラビ・ヤウ多様体の自己同型群を調べ,いくつかの場合にはそれが有限群になることを示した.また, 自己同型群が無限である4次元の例の存在, 双有理自己同型群が無限である3次元の存在も示した.加藤・中山・臼井の共同研究シリーズ「退化する混合ホッジ構造の分類空間」のIIIとして羃零軌道の空間を発表した.それらをカラビ・ヤウ多様体のミラ ー対称性の研究へ応用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数曲線束を持つ複素曲面上の垂直方向の曲線について,局所不変量を考察する際に重要な,特異点に対するスロープ不等式,局所不足数,自己同型群の作用などについて,限定的ではあるにせよ一定の成果を挙げた.また,水平方向の曲線である楕円曲面の2重切断については,ガロア被覆の構成問題への応用を経て2次曲線から成る新しいザリスキ組を見出すなど,著しい成果を挙げることができた.これらのことから,本研究課題は概ね順調に進展していると結論する.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者に研究分担者5名(足利,徳永,大渕,小木曽,臼井)と連携研究者4名(中山,奥間,都丸,遠藤)を加えた総勢10名による研究体制を基本形態とする.担当する課題や地理的条件に応じたゆるやかなグループ分けに従って研究を進め,研究代表者がそれを統括する. 位相モノドロミーが周期的な場合に,モノドロミー周期とtotal valencyから形状が決定される退化ファイバーを単独に取り出して,その標準環の極小自由分解を考察し,シチジー空間の次元を計算する.代数的な堀川指数は,本質的にシチジー空間の次元の交代和なので,これと標準一次系の基点集合のデータを確定させることによって,明示公式を得ることを考えたい.コア曲線の gonality や枝である有理曲線鎖との交点の性質がどのような影響を与えるかに注意しながら研究を遂行する. 他方,モーデル・ヴェイユ格子については,構造が良く知られている有理楕円曲面を出発点として,有理曲面における一般種数の代数曲線束に対して,関数体上の曲線である生成幾何ファイバーの加法とファイバー曲面の切断の幾何学的関係を解明する.特に,多重切断と特異ファイバーの交わる様子とモーデル・ヴェイユ格子における算術的性質の関連を見出したい.そのために本年度は更に将来の研究展開を見据えて,数式処理ソフトを用いた計算によって具体例の蓄積をはかる. 本研究の深化を図るために平成24年度は,首都大学東京の秋葉原サテライトキャンパスにおいて「代数曲面論ワークショップ」を企画して,2度の会合をもった.今年度もこの集会の定期的な開催を継続する.また,関連する国内外の研究集会へ研究協力者を派遣して,積極的に情報収集を行う.
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