研究課題/領域番号 |
24244018
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
岩田 生 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (40399275)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光赤外線天文学 / 銀河天文学 / 宇宙再電離 / 観測的宇宙論 / 電離光子 |
研究概要 |
原始宇宙で起きた宇宙再電離に大きく寄与したと考えられる星形成銀河からの電離光子放射について、観測的研究を推進している。すばる望遠鏡新主焦点カメラ(HSC)用に新たな狭帯域フィルターNB527を製作し、遠方の星形成銀河からの電離光子放射を直接測定し、電離光子脱出率の統計的研究、および電離光子放射率とその他の銀河の性質との関係を明らかにすることが主たる目的である。今年度は、昨年度製作した狭帯域フィルターNB527の性能評価を実施し、科学目的を達成するのに十分な性能を有することを確認した。HSCの共同利用観測は2013年度末に開始されたが、狭帯域フィルターはまだ使用できないため、NB527フィルターのハワイへの移送は待機状態となっている。一方現行主焦点カメラ(Suprime-Cam)による、HSCで観測できない波長の電離光子銀河の狭帯域フィルタNB359による探査も進めている。主焦点カメラを用いる観測提案は採択されたものの、天候不順でデータを取得することができなかった。一方、すばる望遠鏡、ケック望遠鏡等でこれまでに得られているデータについての測光精度向上、分光データの解析、電離光子放射銀河のデータベースのアップデートを進めた。また、電離光子放射源と目される星形成銀河を非常に初期の宇宙で探査する将来スペースミッション計画についての検討として、期待される性能での超遠方銀河の検出期待数の評価や、カメラシステムを実現するために必要なコンポーネントの試作試験を実施するとともに、サイエンスワークショップを開催して、海外研究者も含めて当ミッションで展開できる科学研究についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すばる新主焦点カメラ(HSC)用狭帯域フィルターの製作は順調に達成し、観測が可能な状態になった。HSC自体の共同利用観測開始が当初予定よりも遅れているため、HSCによる観測は実施できていないが、研究員を雇用し、これまでにすばる望遠鏡、ケック望遠鏡等で取得したデータの検討を共同で進めており、電離光子放射銀河に関する新たな知見を得つつある。また、HSCによる本研究の発展として、さらなる遠方宇宙で宇宙再電離を起こしたと考えられる星形成銀河の探査を目指すスペース望遠鏡計画の検討も併せて推進しており、将来的な発展への萌芽として期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で製作したすばる新主焦点カメラ(HSC)用狭帯域フィルターを用いた観測が実施できるかどうかは、共同利用観測において狭帯域フィルターを使用する観測が許可されるかどうかに依存している。HSCでは一度に搭載できるフィルター枚数に強い制約があり、特定の研究に特化した狭帯域フィルターの搭載は従来の主焦点カメラよりも難しくなっている。HSCでの観測については、狭帯域フィルターが使用できる状況になり次第観測提案を行うが、これが2014年度に実現するかは不透明であるため、本研究実施上のリスクである。一方、従来の主焦点カメラでHSCでは観測できない波長域を観測する提案については、2013年の望遠鏡トラブル、2014年の悪天候と、採択されているにも関わらずデータが取得できない事態となっているが、2015年にも再度申請してデータ取得を目指す。 これまでに取得したすばる主焦点カメラのデータやすばる望遠鏡、ケック望遠鏡などでの分光データの解析・検討については、研究員の雇用によって順調に進展しており、成果が十分期待できる。今後ハッブル宇宙望遠鏡のデータなども利用してさらに電離光子銀河の性質に詳しく迫る計画である。 さらに、将来的な宇宙再電離源銀河の探査に向けた検討も引き続き進めていく計画である。地上からは観測不可能な近赤外線での非常に高品質のデータを取得する宇宙望遠鏡計画(WISH)は、国際的な関心も高まっており、2014年度にもワークショップを行う計画である。
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