研究課題
我々は、カリフォルニア大バークレー校およびNASAと共同で、観測ロケットFOXSIによる史上初の太陽硬X線集光撮像観測を行ってきた。加速粒子や高温プラズマからの放射である硬X線の高感度観測は太陽活動の理解に重要であるが、RHESSI衛星やようこう衛星硬X線望遠鏡ではイメージを得るためにフーリエ再構成が必要であり、感度が制限されていた。FOXSIは硬X線望遠鏡と低ノイズ・高分解能の半導体イメージング検出器による直接撮像で、5-15keVの観測でRHESSIの100倍の感度を達成する。我々は焦点面検出器とはる半導体素子を主として担当している。FOXSIは2012年11月2日の最初の打ち上げに続き、観測装置をアップデートして2014年12月11日に2回目の打ち上げ(FOXSI-2)に成功、太陽高感度撮像分光観測を実現した。最初の実験ではシリコン検出器が使用されたが、新たにファインピッチのCdTe検出器を開発した。15keVでの検出効率はシリコンと比べて~50%向上。位置分解能もシリコン検出器の75μmより向上させて65μmであり、FOXSI望遠鏡の角度分解能~4秒角という優れた性能をより引き出すこととなった。活動領域を含むポインティングの観測では、複数の活動領域のイメージングに成功した。同一視野内に複数の活動領域を検出することにも成功し、優れた感度・ダイナミックレンジを実証することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
我々が開発を進めてきた高いエネルギー分解能をもつCdTe半導体を用いて,65μmという,世界でも例のない微細な両面ストリップ検出器を実際に作りあげることができた。特にASICを装着しセンサー信号を処理するフロントエンド回路部分の設計,製造までを日本で行うことができている。研究期間内にNASAのロケット実験を実現することができた。ロケットを用いた将来の太陽観測に向けて,概念検討を進めることができた。また,ガンマ線領域での観測のために,コンプトンカメラを使う方式の検討を進めることができた。
FOXSI1,FOXSI2実験で得られた観測結果を詳細に解析を行う。世界ではじめての65μmピッチのCdTe両面ストリップ検出器の性能評価実験を行うと同時に,今後のロケット実験に向けた改良を施す。ガンマ線領域での観測のために,コンプトンカメラを使う方式の検討をさらに進め,試作を行う。斜入射の光学系と高い位置分解能をもつ硬X線撮像検出器を組み合わせたシステムの地上応用について考察を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
The Astrophysical Journal Letters
巻: 793 ページ: L32,L36
10.1088/2041-8205/793/2/L32