研究課題/領域番号 |
24244025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋一郎 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70144425)
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研究分担者 |
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (50313044)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ダークマター / WIMP / アクシオン / 液体キセノン / 低バックグラウンド |
研究概要 |
本研究は総質量850kg(有効質量100kg)の液体キセノン検出器を用いて、ダークマターの直接探索を目指したものである。極めて稀なダークマターの信号を捉える為に、バックグラウンドのレベルを有効質量内で、10日に1事象程度にする必要がある。しかし、これまでの予備的実験から、光検出器に使われていたアルミニウムに予想をはるかに上回るウラニウム等が含まれていることが判明し予定の感度が得られないことが判明した。アルミを取り除くことはできないので、できるだけその影響を小さくするための改修作業をおこない、平成25年度10月に、予定通り測定器の改修作業が完成した。その後、液体キセノンの浄化等を行い11月末よりデータの収集を開始した。これにより、バックグラウンドは、ほぼ1桁改善したことが示した。 これらの改修作業と並行して、予備的実験で得られたデータを用いて、 1) 世界最大の質量、2) 世界でもっとも低いエネルギーまで探索可能、3) 核反跳だけでなく電子やガンマ線の信号が検出可能、といった他の主力ダークマター探索実験にはない本実験装置のみの特徴を生かしたダークマター探索をおこなった。ダークマターの候補の一つであるアクシオンが太陽中で作られる過程の探索、通常よりも質量が小さいダークマターの探索、ダークマターがキセノンと非弾性散乱を行いガンマ線の放出を行う過程の探索を行い、いずれも世界最高感度リミットを示した。 平成26年度に向けて、バックグラウンドの詳細な評価をおこない、ダークマター探索を開始する。また、感度の抜本的改善には、ウラニウムの多いアルミを使わない光検出器を用いる必要があり関連した開発研究も開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、前年度までに確立された測定器の改修方法を用いて、新たな検出器部材の作成、そして、改修検出器の組み上げを行う予定であった。実際、その組み上げは予定通り平成25年10月に完成した。その後、測定器の調整とバックグラウンドの評価のためにテスト用データー収集と解析をおこない、バックグラウンドのレベルが、ソフトウエアのカットをする前に、ほぼ1桁落ちていることが確認できた。これも、事前の予想どおりであった。さらに新たな再構成プログラムの開発をおこない、それを適用し、さらなるバックグラウンドの低減のテストをおこなったところ、有効質量内で、2桁以上バックグラウンドが少なくなっていることが確認された。 しかし、エネルギー閾値に非常に近い低エネルギー側に、正体不明のバックグラウンドがみつかり、その研究を進めているが、その解明はH26年度に持ち越されている。 以上のような進捗状況により、当初の目的はほぼ達成され、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
改修作業によるバックグラウンドの低減は予定どおりであったが、今後も、バックグラウンドの精査を継続し、将来の測定器のバックグラウンドに対する対策を研究する。また1桁のバックグラウンドの低減が得られたことにより、平成26年度には、ダークマターの探索の為のデータを本格的にかつ長期間にわたり収集する。通常のWIMPS探索のみでなく、低質量のダークマターの探索もおこなう。特に1年間の測定期間にわたり、季節変動を観測する事で、これまで、季節変動を観測したと言っている実験に対して、1桁以上感度のよい測定が可能である。電子やガンマ線のモードでは、世界最高感度の測定器であるので、本実験装置が特徴的にとらえることが可能なアクシオンの探索を継続しておこなう。 低エネルギーのところに残る正体不明のバックグラウンドは、なんらかの示唆であることも念頭にいれ、慎重に評価をしてゆく。 今回の改修では光センサーのバックグラウンドを除去することではなく、カバーをして少なくするしかできなかったため、完全に無くす事はできず、感度に関しては制約があるため、世界最高感度を目指して、あらたな改良を検討する。本研究課題はH26年度で終了であるが、今年度中にになんらかの示唆が見つかれば、さらなる大型化、低バックグラウンド化が必要になる。みつからなかったばあいでも、さらなる高感度での探索を継続するため、光センサーの入れ替えを含む表面BGへの対策などを行い、ダークマターの探索を将来にわたりおこなってゆく。
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