研究課題/領域番号 |
24244026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
瀧田 正人 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (20202161)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙線 / ガンマ線 / チベット / 空気シャワー / ミューオン / 加速機構 / 水チェレンコフ / 100TeV |
研究概要 |
現在チベットで稼動中の世界最高精度の空気シャワー観測装置Tibet-III(37,000平方メートル)の地下2.5mに建設中の水チェレンコフ型ミューオン観測装置を完成させて観測を開始した。2つの観測装置の連動実験を行うことにより、100TeV領域宇宙ガンマ線放射天体の観測を行う。地下大型ミューオン観測装置により、ミューオンを伴う原子核宇宙線起源空気シャワーによる雑音とミューオンを伴わないガンマ線起源空気シャワーによる信号の弁別が可能となる。 建設中の地下大型ミューオン観測装置を予定通り本年度に完成した。具体的な作業予定を以下に列挙する。地下ミューオン検出器プールに防水塗料を塗布した。そして光電子増倍管を各ミューオン検出器に設置し、エレクトロニクス及び高電圧電源に結線した。また、地下大型ミューオン観測装置建設のために移動した地表検出器の再設置を行った。検出器用ケーブルドレインを作成してケーブルを通した。エレクトロニクスの設置・調整及びデータ取得プログラムの作成を行った。各検出器に注水し、地下大型水チェレンコフ観測装置の運転を開始した。地表のTibet-III空気シャワー観測装置と地下大型水チェレンコフ観測装置間のトリガータイミングの調整を行った。 通常私たちの見る太陽は明るく輝いて見えるが、太陽方向を宇宙線観測装置で観測するとダークスポット「太陽の影」として観測されるのである。この「太陽の影」を1996年から2009年まで連続的に解析した結果、「太陽の影」の大きさが11年の太陽活動周期と相関して変化していることを発見した。また、「太陽の影」の深さの年変化を利用して、太陽近傍の磁場構造の検証を世界で初めて行った。この成果はPRLのeditors suggestionとして掲載され、東大のプレスリリース記事となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通りにミューオン観測装置の建設が終了し、空気シャワー観測装置とミューオン観測装置の連動実験を開始した。チベットに特有な政治的問題や僻地での実験ということを鑑みると予定通りに実験を開始したことは当初の計画以上に進展していると判断される。 また、世界最高の統計精度を生かし、高エネルギー宇宙線中の太陽の影を観測することに成功した。宇宙線中の太陽の影を14年間にわたり連続観測することにより、太陽の影と11年周期の太陽活動との相関を実験的に確立した。さらに太陽の影の深さの年変化を太陽磁場モデルと比較することにより、太陽近傍のコロナ磁場に関する知見を世界で初めて得た。この研究成果はPhysical Review Lettersに掲載され、東京大学よりプレスリリースされた。
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今後の研究の推進方策 |
国際競争の激しい宇宙観測に関する研究テーマである。今年度、予定通りにミューオン観測装置が完成し、空気シャワー観測装置との連動実験が開始された。このことにより、世界に先駆けて100TeV領域ガンマ線天文学を開拓する研究目的がいよいよ実現することになった。今後取得予定の観測データの解析を行い、世界で初めて100TeV領域の宇宙ガンマ線による宇宙を撮像することになる。
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