研究課題/領域番号 |
24244036
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山田 章一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80251403)
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研究分担者 |
固武 慶 国立天文台, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (20435506)
住吉 光介 沼津工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30280720)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超新星 / 重力崩壊 / 大質量星 / シミュレーション / コンパクト天体 |
研究概要 |
今年度は本研究の4本の柱に関して以下のような成果を得た。 まず、IDSAを用いたランドスケープ探査に関しては、超新星爆発の3次元輻射流体シミュレーションを世界に先駆けて実行した。輻射計算に関しては、光線分割法によって超並列計算を可能にした独自のスキームを実装しているのが特徴となっている。11太陽質量の親星に関して、重力崩壊からその動的進化を追う、いわゆるこの分野で言うところ第一原理計算において初めて、ニュートリノ加熱メカニズムで爆発が起こる、3次元計算における第一例を報告することができた。 次に、ボルツマンソルバーを用いた精密計算については、3次元ニュートリノ輻射輸送を扱うボルツマン方程式を解く計算コードを完成させて、3次元分布におけるニュートリノ輻射輸送の特徴を明らかにすることが可能となった。固武・滝脇らのシミュレーションで得られた超新星コアの3次元分布への適用を行い、光線分割法などの近似計算手法との比較を行い、近似手法によるニュートリノ加熱への影響を探ることができた。3次元計算コードにおける疎行列の反復解法では最適化手法を提案した。 大質量星の準静的進化については、ラグランジュ的記述に基づく回転星の平衡形状計算の定式化に進展を見た。具体的には、これまで有限要素法を形式的に応用した定式化を行っていたものを、変分原理に基づくものに変更した。これにより、近似の物理的意味が明確となるとともに、より多くの解法が試せるようになった。実際、ニュートン法に基づく解法では小さい固有値の問題がまだ解決を見ないのに対して、別途モンテカルロ法に基づく解法では球対称解が問題なく求まることがわかった。また、境界条件に関する知見も得られた。 最後に、ブラックホール形成チャンネルの研究では、ボルツマンソルバーの特殊相対論化を進め、一般相対論化の足がかりとした。また、他のスキームの検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下、本研究の4つの柱に関して達成度を順に見て行く。 (1)超新星爆発の数値計算はその計算コストの高さから、計算結果の数値分解能依存性を調べることは至難の課題であった。昨年度から稼働しているスパコン京の優先課題として選ばれたことで、3次元爆発シミュレーションにおける「数値分解能依存性」を調べるという、当初の計画よりもさらに踏み込んだテーマに関する研究を初年度に行うことができた。これらの観点からこのテーマに関しては当初の計画を上回る成果が得られたと考えている。 (2)3次元でボルツマン方程式を直接解く手法では、計算量が膨大となる。方程式を差分化して解く計算コードによるシミュレーションは、最先端のスパコンを用いても長時間の計算を要する。プロトタイプであった3次元ボルツマンソルバーの並列化・高速化を行い、十分な解像度におけるプロダクティブランが可能となった。これによりIDSAの計算結果による複数の3Dモデルでのニュートリノ輸送計算を複数行うことができた。これらより、このテーマも当初計画どおり順調に進んでいると考える。 (3)大質量星は一般に高速で自転しているため、その力学平衡を進化計算に反映させることが重要である。そこで、本研究ではまず一般の回転則に対して平衡形状を解けるようにすることを目指しているが、本年度は変分原理に基づく新たな定式化を得るとともに、ニュートン法の安定性解析やモンテカルロ法の適用を行うなど、まだ自転平衡解を得るところまでには至っていないが、達成度としては十分であると判断している。 (4)ブラックホール形成の定量的計算に向けた準備では、ニュートリノ輸送パートの開発を先行させている。特に、特殊相対論化では独自の定式化に基づくエネルギー内挿法の開発等に進展を見た。一方、一般相対論化は赤方偏移等の扱いやアインシュタインソルバーとの連結には至らず、全体として若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
全研究の中で最も先行しているIDSAを用いたランドスケープ探査では、次年度はまず親星依存性の爆発メカニズムに及ぼす効果を調べ上げた初年度の2次元軸対称シミュレーションの計算結果をできるだけ早急に論文として発表した後、爆発に伴って放射される重力波・ニュートリノシグナルの観測可能性を明らかにする。3次元シミュレーションに関しては、ドイツ、アメリカの研究グループの計算結果との比較を眼中に入れ、27倍の太陽質量モデルを親星にとり、衝撃波不安定性とニュートリノ加熱が引き金となって駆動される対流運動、そのどちらが爆発に本質的か明らかにする予定である。 超新星コアの3D分布におけるニュートリノ輻射輸送計算は、世界でも初めてのものであり、できるだけ早急に論文として発表すべく、データ解析と論文執筆を行っている。これをもとにニュートリノ近似が及ぼす影響をIDSA計算における分析に活かして行く予定である。計算コード開発では、H24年度に進めて来た流体計算コードとの結合を完成させて、まず2Dにおける重力崩壊ダイナミクスの計算を行えるようにする。 自転星の平衡形状計算の研究は、昨年度に好感触を得たモンテカルロ法に基づく解法を中心に据えて推進する。具体的には、無回転星に対して得られた数値解に対して徐々に自転を加えていき、平衡解が求まるかを調べていく。最初の解が得られた段階で論文化する予定である。また、ニュートン法における問題を明らかにすべく、行列の固有値分布を調べ、問題となっている固有ベクトルの性質を明らかした上で、その解決法をあわせて検討していく予定である。 輻射輸送計算コードの一般相対論化を2D版のボルツマンソルバーに対して行っていく。定常背景にコードを適用した後、流体コードおよびアインシュタインソルバーとの結合をはかる。また、モンテカルロ法など他の解法も引き続き検討する。
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