研究課題/領域番号 |
24244045
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有馬 孝尚 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90232066)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 方向二色性 / 電気磁気光学 / 光のローレンツ力 / メタホウ酸銅 |
研究概要 |
平成24年度は、トロイダルモーメントの強的秩序相の多ドメイン状態において、ドメイン壁付近で光にローレンツ力が加わるかどうかを検証する目的で次のような実験を行った。測定対象としては、180度ドメインを形成しやすいようにニッケルを少量ドープしたメタホウ酸銅(Cu,Ni)B2O4を選び、フラックス法によって単結晶成長を行った。育成した試料のニッケルの置換量は3パーセント弱であった。結晶学的に単ドメインであることを単結晶X線回折法によって確認したのち、ラウエ写真で結晶方位を確定し、(110)の広い薄板状に切り出した。両面を光学研磨したのち、鏡トロイダル相が出現する15Kまで冷却し、光学測定を行った。 波長882nmの光を用いて方向二色性を利用したドメイン観察を行い、180度ドメインの形成を確認するとともに、そのドメイン壁の位置を特定した。そののちに、CCDカメラを用いて、吸収領域から外れた波長900nmにおける試料の透過光像を撮り、試料の各部位からの透過光量が均一であることを確かめた。そののちに、CCDカメラの位置を焦点位置から前方や後方へとスライドさせながら撮像を続けることで、試料の各部位を通過した光がどのような角度で進行しているかを確かめた。その結果、ドメイン壁の付近で、確かに光が屈折を生じていることが明らかになった。屈折の大きさを定量的に評価するために、同じ実験を平行度の高いレーザーを用いて行い、100ミクロンの厚みの単結晶のドメイン壁を通過した場合に、0.008度であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の初年度計画どおりに、多ドメイン状態のドメイン壁での光の屈折を実験的に検出することに成功した。さらに、その屈折の大きさを定量的に評価することもできた。これらの成果から、おおむね順調に進展したと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、当初の計画通り、強トロイダル相の単ドメイン状態の単結晶について、真空から試料に鉛直に入射した光がローレンツ力による屈折を受けるかどうかの実験的な検証に移る。初めに、光学系の構築と、測定精度の検証を行い、必要があれば、測定精度を上げることで、実際の検出につなげる予定である。
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