研究課題/領域番号 |
24244045
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有馬 孝尚 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90232066)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 方向二色性 / 電気磁気効果 / 光のローレンツ力 / メタホウ酸銅 |
研究概要 |
メタホウ酸銅は、方向二色性や方向複屈折を示すことが確認されている物質の中で最も大きな効果が観測されており、光のローレンツ力を検証するための対象物質として最も有力である。この物質は正方晶であり、9Kから21Kの範囲でc軸と垂直な方向に弱い強磁性成分を有し、方向二色性や方向複屈折が出現する。磁化ベクトルの向きによって方向二色性や方向複屈折を示す光の伝搬方向が変化することをこれまでに見出してきたが、平成25年度は、強磁場を印加することで磁気モーメントの向きだけでなく、傾きを変化させ、その場合に方向二色性や方向複屈折がどのように変化するのかを研究した。 その結果、15テスラの磁場印加によって、最も低いエネルギーの原子内d-d遷移のピークが分裂し、さらに、方向二色性の大きさが変化していく様子が観測できた。この結果から、スピン軌道相互作用によってdxy軌道が他のd軌道と混成する割合を定量的に見積もることに成功した。このような定量によって、ローレンツ力検証のために必要な測定系の精度を検証した。 これと並行して、ナイフエッジ型のビームプロファイラを利用して光路の微妙な変化を検出するための光学系の構築に着手した。現在のところ、まだローレンツ力の観測には至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光の屈折の大きさの定量的な評価に基づき、必要な光学系の構築に取り掛かっている。さらに、メタホウ酸銅に強磁場を印加した場合の吸収ピークプロファイルや方向二色性の変化が大きく、スピン軌道相互作用による混成度に代表される波動関数の定量的な見積もりに成功した。この結果は、検証を目指す現象の定量的な評価につながるため、装置の構築方針の確定にも大きく寄与する。これらの結果を踏まえて、順調に推移していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
ローレンツ力の検証のためには、結晶のさらなる大型化と、測定系の精度の向上が必須である。後者については、試料中での光路のシフトを数ミクロンの精度で計測できるシステムを立ち上げる必要がある。そこで、具体的には、半導体レーザーの平行度を保ちながら径を小さくし、試料に入射させることができるように入射系の改造を行う。さらに、単結晶試料の片側の面にピンホールを設置するとともに、逆側の面に金等の金属細線を設置することで、ビームの変位がミクロンオーダーで測定できるシステムを立ち上げる。
|