研究課題/領域番号 |
24244046
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小宮山 進 東京大学, 総合文化研究科, 特任研究員 (00153677)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱励起エバネセント波 / 近接場テラヘルツ光 / ディラック電子 / 表面フォノンポラリトン / 超高感度赤外光検出 |
研究概要 |
当初の計画通り実験を進めた。まず複数の極性結晶について熱励起エバネセント波の検出に成功し、有用な知見を得るとともに、3Dトポロジカル絶縁体について今後のための予備的な結果を得た。 (i)極性結晶 熱励起エバネセントの強度がReststrahlen bandで格段に強まることが期待される。その効果を研究するために、GaN, AlN の極性結晶について熱励起エバネセント波を検出することに成功した。検出波長(15ミクロン)がReststrahlen bandのLO-phonon波長近傍に対応するこれらの物質において、検出される熱励起エバネセント波強度が試料表面からの距離に対して異常なふるまいをすることを見出した。これは表面フォノンポラリトン共鳴による影響と考えられ、機構を確証するための本年度の実験計画に発展している。さらに、熱励起エバネセント波の検出信号強度からエバネセント波の絶対的強度を導出し、表面フォノンポラリトン共鳴によって、黒体輻射に比べて桁違いに強い電磁波強度が得られることを明らかにした。(申請書に記したとおり、過去に報告された高効率熱発光の例(Greffet et al., Nature 416,61 (2002))とは起因が質的に異なり、強度的にはの100倍以上強い。) (ii)3Dトポロジカル絶縁体 当初計画通り、前田研究室でSeを過剰に仕込んで成長したSi2Se3のバルク結晶を計測し、常温で熱励起エバネセント波を検出することに成功した。検出された熱励起えばエバネセント波の起源として、目的の表面のディラック電子の可能性とともに、光学フォノンや音響ピエジフォノンの2つがある。常温では判別できないために、平成25年度により低温で実験を行うための準備を行う。いずれにせよ、今後の実験に向けて見通しを与える結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極性結晶の実験と、トポロジカル絶縁体の実験双方について、計画どおり実験を行ってエバネセント波の検出に成功し、解釈に関して初期の目的を達成した。このことで、平成25年度の研究計画を当初計画通りの進度で進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
(i) 極性結晶 平成24年度の実験に対する定量的理解を深めるために、測定をSiO2, SiC, GaAsに拡大する。特に、SiO2 と GaAsのReststrahlen bandは検出帯域から大きく外れ、LO,TO-phononによるエバネセント波は無視できるほど微弱な筈である。しかしこれらの物質は結晶が反転対称を持たないためピエゾAc-phononが存在し、それに起因してエバネセント波が生ずるはずである。ピエゾAc-phononの寄与まで含んだエバネセント波の理論は現時点で存在しないが、本研究で実験事実を積み重ね解析を進めることで、より一般的な理論の出現を促すとともに、金属短針と物質表面のエバネセント波を介した相互作用について理解を深める。 (ii)3Dトポロジカル絶縁体 液体ヘリウム低温までの低温域でのエバネセント波の検出を可能にするために、低温用のまったく新しい装置をメーカーとの協力で開発し、新たな装置により、試料に電流を流した状態、およびSTM探針からトンネル電流をディラック電子系に注入することによるエバネセント波の生成を検出する。
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