(i)極性結晶 GaNとAlNを試料として、表面フォノンポラリトン共鳴の波長帯域(14~17um)で熱励起エバネセント波を計測し、試料表面のごく近傍(30nm以内)では、計測されるエバネセント波強度が、表面からの距離の増大に伴って顕著に増大して高さ30nm近傍で極大値を取り、それ以上の距離で減少することを見出した。本研究ではじめて見出されたこの特異な現象の機構を、深針依存性を含めた詳しい計測と数値的な解析を通して調べ、この特性が、タングステン深針と表面が形成する有効分極率の幾何学的共鳴によることを解明した。このことで、エバネセント波とタングステン深針の相互作用の基礎的理解を深め、パッシブ・テラヘルツ近接場計測に対する一般的な理論的基盤を与えた。 (ii)3Dトポロジカル絶縁体。グラフェン 昨年度までに、常温での3Dトポロジカル絶縁体の計測、および低温度での計測に向けた装置開発の準備を進めていた。本年度は、低温での計測の要となる検出器の開発を継続して、波長範囲の拡大と、感度の向上に成功した。試料については、3Dトポロジカル絶縁体は高純度試料を得る事が必ずしも容易でないため、高品質試料が比較的得やすいグラフェン素子の作成を東北大・尾辻研究室に依頼し、同時に、液体ヘリウム温度までの極低温での近接場エバネセント波検出を可能にする、新たな低温SPM装置の開発を、低温STM/AFMのメーカーの協力のもとに進めた。
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