研究課題
絶縁体スピントロニクスの物理の基礎を形成し、環境負荷の小さな新しいスピン利用技術の基盤を築くことを目指した研究を行った。まず、磁気転移点が室温付近にある単結晶物質を用いて、常磁性状態におけるスピンポンピングを初めて観測することに成功した。常磁性体においては長距離磁気秩序が存在しないにも関わらず、非常に強力なスピン流信号が得られた。従来、強磁性体のみを対象としていたスピンポンピングという概念を、今後は常磁性体にも拡張する必要性を示した画期的な成果である。トポロジカル絶縁体はバルク部分が絶縁体でありながら、表面ではDiracフェルミ粒子の存在により導電性を示す稀有な物質である。これまで、この性質を正しく反映した材料系においてスピン流-電流変換現象を観測した例はなかった。今回我々は初めてトポロジカル絶縁体の表面状態を反映したスピン流-電流変換現象を観測した。観測された効率はまだ小さいものの、原理的には、トポロジカル絶縁体特有の極めて高いスピン流-電流変換効率が今後得られるものと期待される。これまでスピンゼーベック効果の研究においては、重畳する異常ネルンスト効果の寄与を含めたまま議論がなされていた。今回我々は試料の磁性層を面内と面直に磁化させた場合の縦型熱起電力を比較することで、これら2つの効果を分離することに成功した。その結果、これまで観測されていた磁性絶縁体と白金の二層膜における熱起電力は、そのほとんどがスピンゼーベック効果によるもので、ネルンスト効果の寄与は無視できる程度であることが示された。逆にこの結果から、白金の代わりに磁性金属を用いることで、積極的に異常ネルンスト効果を重畳させたハイブリッド熱電変換が極めて高い変換効率を示すことを発見した。これらの結果を複数の論文にまとめ、Physical Review Letters誌(2編)等に掲載された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 18件、 謝辞記載あり 18件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 13件) 備考 (1件)
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