研究課題
ゼオライト結晶の配列したナノ空間におけるアルカリ金属の性質は,ゼオライト骨格の種類とアルカリ金属の種類とその吸蔵量に依存して様々に変化し,興味ある性質を示す。これらを統一的に理解するため,Holstein-Hubbardハミルトニアンをベースとする粗視化モデルを提案した。このモデルでは,細孔内のアルカリ金属クラスターの局在s電子を強束縛近似で扱い,細孔間の電子遷移エネルギーtと電子格子相互作用エネルギーSに加えて,細孔内の2電子間の斥力エネルギーUを加え,それに細孔当たりの平均s電子数nを仮定して,t-U-S-nダイヤグラムによる相関ポーラロン系を考える。その結果,ラージポーラロン(LP),スモールポーラロン(SP),スモールバイポーラロン(SBP)によって磁性や絶縁体金属転移がおおよそ説明できることがわかった。具体的には,ゼオライトLSXのダイヤモンド構造で配列したスーパーケージとβケージにKクラスターを形成すると,スーパーケージに遍歴電子強磁性,βケージに局在電子系の磁気モーメントが形成され,その非等価な磁気副格子間に反強磁性相互作用が発生してフェリ磁性が発現する。それと共に,低温で急激な電気抵抗の増大が観測される。これを,フェリ磁性の発現と共に,遍歴電子とβケージの局在電子の混成による電子相関によってフェルエネルギーに微小なギャップが発生し,近藤絶縁体に類似した状態が形成されると解釈した。また,ゼオライトLSXのNaクラスターでは,nを増加させると絶縁体から金属へ転移し,さらに室温に向かって顕著に増大する磁化率が観測される。これを,LPとSPが共存し,SPが熱的に励起されて磁化率が増大すると解釈した。一方, 23Na-NMRでは磁化率と共にシフトするシャープな共鳴が観測され,共存するLPとSPのダイナミカルな運動によるs電子の磁性が観測されていると解釈した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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