印象派の精神とは、ソフトマターの先駆的研究によりノーベル物理学賞を受賞した故de Gennes教授が、理論研究者を印象派画家にたとえた言葉で、枝葉末節に目をつぶりシンプルな物理的本質をえぐりだす精神である。本研究代表者は、この精神で研究を行い、理論・実験・シミュレーションの研究を複合して濡れ・表面張力現象や物質強度について研究し、シンプルで本質的理解をもたらしてきている。本研究では、一連の濡れの研究をさらに発展させ、粉粒体等へも研究を展開し、工学や企業の開発現場等で指導原理となり得るシンプルで本質を突いた理解と法則を明確に示すことを目的としている。具体的には主に以下のような研究を展開した。 (1)ヘレショウセル中での液滴・バブルの動力学: 代表者らが液中液滴の融合現象について示した動力学について、多角的な角度から理論を見直し、物理的な解釈を深める研究を行い、成果を論文に発表した。この他にも、融合時のチャージ効果、バブルの破裂、バブル・流体や固体の粘性液体中での動力学にも着手し、面白い結果を得て、物理学会で発表した。 (2)テクスチャー表面の濡れ: 近年、代表者らはシャープなエッジを持つ高いピラーからなる表面への浸透の動力学におけるスケーリング法則を示した。本研究では、エッジが丸みを帯びた低いピラーで浸透実験を行い、新しいスケーリング法則が非常に広い範囲で明確に確立された。理論的にも非常に興味深く、Rapid Communicationとして論文誌に発表された。この他にも、テクスチャー表面への浸透における重力効果を実験と理論の明確な一致から示し、成果を論文に発表した。 (3)粉粒体の動力学: ブラジルナッツ効果について実験を開始して、とても興味深い結果を得つつあり、物理学会で発表した。 また、本年度も新聞で代表者の研究が大きく取り上げられるなどして、一般社会への成果還元も行われた。
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