研究課題/領域番号 |
24244071
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
松井 孝典 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 所長 (80114643)
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研究分担者 |
荒川 政彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10222738)
中村 昭子 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40260012)
門野 敏彦 産業医科大学, 医学部, 教授 (60359198)
杉田 精司 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (80313203)
黒澤 耕介 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (80616433)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天体衝突物理学 / 状態方程式 / 惑星初期進化 / 高速分光学 / 固体物性 / 固体惑星初期大気 / 超高強度レーザー / 大気の起源 |
研究概要 |
本年度は主要珪酸塩鉱物である橄欖石を用いて、阪大レーザー研で衝撃圧縮実験を行った。時間分解発光分光・速度干渉同時計測によって、1.2 TPaまでの衝撃圧縮圧力・温度の同時計測に成功した。衝撃圧力と温度が同時に計測できると、熱力学的演算によって、衝撃圧縮に伴うエントロピー増加量を算出することができる。実験結果から得られた橄欖石の圧力—エントロピー平面上のユゴニオ曲線と惑星科学分野で頻繁に使用されるM-ANEOSという状態方程式と比較したところ、>10 km/sの高速度衝突時には従来の理論推定値よりも大幅にエントロピーが増加することが明らかとなった。これは従来の理論が天体衝突の極限状態におけるエネルギー分配過程を正しく取り扱えていないことを意味し、M-ANEOSを使用して行われた多くの理論研究結果に再考を促す結果である。 エントロピーが既知となると衝撃圧縮を受けた珪酸塩の断熱開放経路が決定され、天体衝突後の岩石蒸気の量、及びエネルギーを算出することができる。この結果を隕石重爆撃期の天体衝突に伴う惑星大気の吹き飛ばし問題に適用したところ、もし初期地球の大気圧が10気圧以下であれば、天体衝突が供給するエネルギーによって初期大気が全散逸する可能性があることがわかってきた。これは太陽組成と現在の地球大気組成の特に希ガス量の大幅な違いを説明できる可能性があり、惑星科学の重要問題の一つが解決される可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)高輝度レーザー照射実験および2段式軽ガス銃の実験からは、研究計画時に予定していた超高圧衝撃条件下での比熱および脱ガス効率のデータを得ることができ、論文発表できた。また、それらの実験データに基づいた地球型惑星の大気進化に対する天体衝突の影響を評価できており、順調な進展状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画と類所の計画が、アメリカのハーバード大学を中心としたグループが実施されつつあり、国際的な競争は一層激化しつつある。我々のグループもハーバードのグループも主立った衝撃実験データは揃いつつある状況である。実験結果についての論文化については我々が一歩先んじることができたが、実験データに基づいた地球型惑星の大気進化についての論文の制作についても優位性を保てるように進めることが急務である。
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