研究課題
客観解析データを用いたコンポジット解析により、我が国で竜巻を生じた温帯低気圧(温低)と生じなかった温低の構造の違いを明らかにするとともに、米国で竜巻を生ずる温低と比較し、日米の竜巻を生ずる温低の構造の違いを明らかにした。竜巻と竜巻を生ずる特殊な積乱雲(スーパーセル)の環境場では対流有効位置エネルギー(CAPE)とストームに相対的な環境風のヘリシティ(SREH: Storm-Relative Environmental Helicity)という2つのパラメータが大きいことが知られているが、日本で竜巻を生ずる温低の暖域におけるCAPEとSREHは、共に米国よりも小さいことがわかった。この違いは日本が海洋に囲まれた島である一方、米国は内陸の陸面上に位置するため、米国では日射による陸面の加熱によりCAPEが大きく、また陸面は海面よりも粗度が大きいため大気下層の鉛直シアが大きくなることによる。このことは、米国では藤田スケールでF4,F5という激しい竜巻が発生するが、日本ではこれまで発生していないことを説明する可能性がある。これ以外にも、(1)台風に伴う竜巻の分布を良く説明する「環境場の空気の取り込みを考慮したCAPE(E-CAPE: Entraining CAPE)」の計算に必要なスーパーセルの高解像度数値実験を行い、適切なエントレインメント率を推定した。(2)米国で竜巻のポテンシャルの推定に使われている環境パラメータのうち、CAPEを含むものについて、CAPEをE-CAPEに置き換えると、竜巻の発生分布をより良く説明する可能性に関する示唆を得た。(3)海上の弱い低気圧に伴ってメソβスケールの渦が発生し、その中で竜巻状の突風が生じて、船舶の遭難事故が起きた事例について数値モデルでの再現に成功し、メソβスケール渦と竜巻の生成機構と低気圧に伴う突風現象の階層構造を明らかにした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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