研究課題/領域番号 |
24244076
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
田口 真 立教大学, 理学部, 教授 (70236404)
|
研究分担者 |
吉田 和哉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00191578)
坂本 祐二 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50431523)
高橋 幸弘 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50236329)
渡邊 誠 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10450181)
莊司 泰弘 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (70582774)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | リモートセンシング / 極地 / 航空宇宙工学 / 惑星 / 大気 |
研究概要 |
本研究費で進めている極周回成層圏テレスコーププロジェクトを「風神(FUJIN)」と名付けた。最初の気球実験FUJIN-1は極周回成層圏テレスコープの機能・性能を確認することを目的として、平成24年8月に北海道の大樹航空宇宙実験場(TARF)での実施を目指して準備を進めた。平成23年度より継続して、宇宙科学研究所においてゴンドラの製作及び環境試験を行い、平成24年6月からTARFでフライト前の最終調整及び動作試験を実施した。8月3日にゴンドラは放球台に移動して放球準備は完了したが、高層風の状態が放球に適さなかったため、実験は見送られた。 実験機材は一旦宇宙科学研究所へ持ち帰り、性能をさらに向上させるために次の改良を施した。既存のスターセンサに加えて、狭視野のスターセンサを併設し、望遠鏡視野への天体導入を容易にした。動作保証範囲を下回っていたメモリカードユニット、可動ミラー用電源に、ヒータを取り付けて能動的に保温するようにした。熱真空試験によって、ヒーターが所定の温度でON/OFFすることを確認した。コントロールモーメントジャイロのリミッタ、ミッションカメラのアナログ出力階調を改良した。 FUJIN-1の次のステップとして、スウェーデン・キルナでの本格的金星観測を計画している。そのために、望遠鏡をサイズアップしたFUJIN-2を開発している。FUJIN-2に使用する望遠鏡はナスミス焦点を持つ口径400 mmのカセグレン式反射望遠鏡である。鏡筒及び経緯台はほぼ完成した。11月にハルトマンテストを実施した結果、まだ光軸調整が不十分であることがわかった。可動ミラーを収納する気密容器を製作した。ゴンドラ設計、モータードライバの検討を開始した。 また、観測された金星画像データ解析のために、SPICE Toolkitを利用して、金星の座標軸と明暗境界線を作図するプログラムを開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、FUJIN-1ゴンドラは完成し、フライトレディーの状態にまで仕上げることができた。しかし、高層風の状況のために、気球実験は延期された。そのため、平成25年度に計画されたスウェーデンでの実験も1年先送りせざるを得ない。FUJIN-2の開発はFUJIN-2実験と並行して進められているが、一部の部品を共用しているため、FUJIN-1実験が終了しないとFUJIN-2の開発が進められない部分がある。したがって、FUJIN-2の開発にも遅れが生じることとなった。原因が天候という不可抗力とは言え、計画の遅れは事実である。しかし、それ以外には、大きな問題や見込み違いが原因となる計画変更はない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施できなかったFUJIN-1実験を平成25年5~6月に実施する。金星の太陽離角が小さく観測条件としてはよくないが、機能・性能の確認は可能である。水星と木星が近くに見えるので、スムーズに金星観測が進めば、余った時間で水星と木星の観測も試みる。FUJIN-1実験のフライトデータを解析し、FUJIN-2システムの製作にフィードバックする。 スウェーデン・キルナにおけるFUJIN-2実験は1年繰り下げて平成26年度に実施する。FUJIN-2の基本的システム設計概念はFUJIN-1のそれを引き継ぎ、望遠鏡を大型化する。それに伴って、姿勢制御系、電源系を改良・更新する。FUJIN-2用カセグレン望遠鏡の受光部を製作する。FUJIN-1では2波長でしか観測できない分光部を改良し、フィルターターレットによって多波長を選択できる分光装置を製作する。ゴンドラ制御則はFUJIN-1実験のデータを反映して修正する。科学データ取得用カメラ、サンセンサ用カメラ、スターセンサ用カメラを新規に開発する。6月から9月の期間に北大でFUJIN-2望遠鏡の光学調整及び性能確認を実施する。10月から11月にゴンドラを組み上げ、12月から1月にかけて、システム総合試験を実施する。12月までにESRANGEへ赴き、気球実験の打ち合わせと実験施設及びインターフェースの確認を行う。平成26年1月から機材輸送の準備を開始し、年度末にESRANGEへ向けて機材を発送する。学会やシンポジウムでFUJIN-1実験による研究成果を発表するとともに、査読誌に論文を投稿する。 本研究費はFUJIN-2のゴンドラ製作費、輸送費、旅費等にあてる。ESRANGEへ支払う実験経費は円安やヘリウム価格の高騰のため大幅に増加している。JAXA小規模プロジェクトから実験経費の支援を受ける。
|