研究課題/領域番号 |
24244079
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
WALLIS R・Simon 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30263065)
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研究分担者 |
榎並 正樹 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (20168793)
水上 知行 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (80396811)
青矢 睦月 徳島大学, ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (90415638)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マントル / 結晶選択配向 / EBSD / 沈み込み帯 / マントルとスラブ結合 |
研究概要 |
沈み込むスラブとその上方に分布するウェッジマントルの結合強度は,火山弧の位置,地震発生領域など沈み込み帯の活構造を規定する主要因である.しかし,深さに対する結合強度の変化はよくわかっておらず,沈み込み帯のモデリングを行う上で大きな障害となっている.本研究では,30kmから100 kmまでの深さを経験したウェッジマントル起源及びスラブ起原の岩石を採取し,構成鉱物の種類と結晶選択配向,変形組織などを調べることで,深さに対する結合強度の変化とその変化の要因を直接的に明らかにする.さらに,ウェッジマントル内でのカンラン石CPOの形成にとって,蛇紋岩の脱水に伴うtopotaxial成長が重要な過程であるという仮説をたて,これを検証する.これらの研究結果を元に,プレート収束境界におけるマントルの流動形態を明らかにする。 本年度はEBSDによる結晶方位測定可能な低真空型走査電子顕微鏡の購入と立ち上げであった。価格と機能の組み合わせで複数の業者を訪問し、比較した上で、日本電子のJSM-6510LVのものにオックスフォード社の電子線後方散乱解析(EBSD)及び同社のエネルギー分散型検出器をつけたシステムにした。また、試料準備のため日本電子製JEE-420の蒸着器も同システムの一部として購入した。それぞれの機械の搬入は11月に終了し、その後複数回の調整があった。薄片試料用のホルダーも作成してもらった。 機械の立ち上げや測定に関する助言をいただくためにEBSDに関する研究の第一人者であるフランスのMontpellier大学のDavid Mainprice氏に研究室訪問していただき、測定条件に関するアドバイスをいただいた。 初年度にも関わらず論文を順調に発表し始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主要な目標は機械の選定及び設置にあったので、それは達成した。また、複数回で国内・国外の学会での研究に関する発表を行い、広く理解していただくと同時に研究宣伝活動も行った。さらに、すでに採取された試料を用いて構造解析を行い、マントル中に鉱物成長による結晶選択配向が存在する可能性を明らかにした。この成果について学会で発表し、投稿原稿を準備しているところである。他に本プロジェクト立案にあたって制された考えとデータをまとめて学術雑誌に形成された。特に重要名成果として三波川変成帯に分布する蛇紋岩体とかんらん岩体は高圧、つまり深部まで沈み込んだ物質の分布領域に限られていることが判明し、この観察事実はこれらのマントル岩石はすべて沈み込み帯上方に分布するウェッジマントル起源であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は早い段階で専門家を集め、現地調査と勉強会を開く予定である。その後は購入した分析器を用いて、沈み込み込んだ物質と上方に分布するウェッジマントルの地質構造と結合に関する情報を抽出する予定である。また、沈み込み帯におけるかんらん岩のかんらん石結晶選択配向の一部は鉱物成長に起因する説をたて、投稿原稿を準備する予定である。一般的にかんらん石の選択配向は流動変形に起因すると考えられるので、今回提案する形成プロセスの普遍的な重要性が認められれば、沈み込み帯におけるマントル流動に関する考え方は大きく変化する可能性がある。
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