研究課題/領域番号 |
24244082
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西 弘嗣 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (20192685)
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研究分担者 |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (00374207)
山中 寿朗 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60343331)
桑原 義博 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (90281196)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 白亜紀 / 温室期 / 蝦夷層群 |
研究概要 |
白亜紀中期の極限温室期のひとつである海洋無酸素事変2の時期に,北西太平洋で堆積した白亜系蝦夷層群佐久層の露出する北海道苫前町,幌加内町,占冠村,夕張市の各地域で野外調査を実施し,地質図・柱状図を作成するとともに,各セクションにおいて泥岩(200試料)および凝灰岩試料(50試料)の採集を行った.苫前,幌加内,夕張地域で採取した泥岩については,テトラフェニルホウ酸ナトリウム溶液を用いて溶解させ,開口径64マイクロメーターのメッシュで洗浄した後,微化石・植物片の抽出を行った.抽出した微化石については,同定および群集解析を実施し,植物片については,岡山大学の分担者(山中寿朗)の研究室において,質量分析計を用いて安定炭素同位体比の測定を行った.その結果,各セクションの佐久層において海洋無酸素事変2の詳細な層準が明らかになり,微化石群集の変動から,溶存酸素の減少が北西太平洋においても複数回発生したことが明らかになった.また,凝灰岩からジルコンを抽出し,Activation LaboratoryにおいてSHRIMP2を用いたU-Pb年代測定を実施した.その結果,放射年代による定量的な年代値(94.3Ma~91.0Ma)を得ることができ,海洋無酸素事変2発生時期の詳細な年代モデルの構築にも成功した.また,今回設置したマイクロウェーブ分解装置を用いて泥岩試料を分解し,ICP-AESを用いて無機元素含有量についても測定を行った.無機元素含有量の結果も微化石群集の結果と整合的で,海洋無酸素事変2発生期間中に複数回の溶存酸素減少の傾向が示された.また,当時の陸域の温暖・湿潤環境の復元のための粘土鉱物分析(イライトの結晶化度および粘土鉱物組成)を九州大学の分担者(桑原)の研究室で予察的に行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,北西太平洋における極限温室期の古環境復元を目指しており,極限温室期の対象として,海洋無酸素事変1b(1億1300万年前)と海洋無酸素事変2(9400万年前)の時期に堆積した地層(北海道蝦夷層群)の高解像度の解析を行っている.現時点では,海洋無酸素事変2について複数のセクションで試料採集を実施し,その分析についても炭素同位体比,無機元素含有量,微化石群集解析を行った.研究は当初の予定通りに進行しており,おおむね予想通りの結果が得られている.ただし,粘土鉱物分析については分析方法の開発に時間がかかったために遅れている.しかし,分析方法が今年の3月下旬に確立できたため,現在,作業を続行中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,海洋無酸素事変2の試料について粘土鉱物分析を集中的に行い,その結果をこれまでの微化石,無機元素組成,炭素同位体比の傾向と比較.検討する.また,今年度行った一連の作業を,海洋無酸素事変1bの層準に対しても実施し,白亜紀における極限温室期における2つのイベントの比較・検討を行っていきたい.
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