研究課題/領域番号 |
24244086
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土山 明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90180017)
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研究分担者 |
平田 岳史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10251612)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | はやぶさ計画 / レゴリス / 宇宙風化 / 隕石 / X線CT / 太陽風 / 衝突 / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
「はやぶさ計画」により小惑星イトカワ表面から採取されたレゴリス粒子サンプルについて、初期分析した42粒子に加え、6粒子を新たに初期分析と同じ手法(マイクロX線CT)により3次元構造を求めた。また、対応すると考えられるLLコンドライト隕石の粒子を同様の手法で分析し、イトカワ粒子と比較した。これにより、イトカワ粒子がLLコンドライトに対応し、レゴリス粒子が摩耗されているなど、初期分析において得られた結果に確証を与えた。 一方、イトカワおよびLLコンドライト粒子のFE-SEMによる表面観察をおこない、ナノスケールでもイトカワ粒子に摩耗がおこっていることを明らかにした。さらに、イトカワ粒子の断面をTEM/STEM観察し、表面の深さ約100 nmの領域において非晶質化、鉄に富むナノ粒子の生成だけでなく、空隙(ブリスタ)生成を見出し、宇宙風化が進行して行く過程を明らかにした。このような宇宙風化層の生成は、主として太陽風(とくにHe)の照射によること(タイムスケールは1000年程度)を提唱した。また、粒子の摩耗と宇宙風化層の進行には関連がないことから、宇宙風化層の生成とは別の摩耗プロセス(宇宙浸食)がより長いタイムスケールでおこっていることを明らかにした。 以上により、初期分析結果と合わせて、以下のようなイトカワ表面でのプロセスを提唱した。(1)微小天体衝突によるレゴリスの形成、(2)太陽風粒子の打ち込みと宇宙風化層の生成(~1000年)、(3)地震波に誘起された粒子運動による粒子の摩耗(>1000年)((2)と(3)が繰り返しおこる)、(4)衝突による最終的な粒子の兆散(<800万年)。 以上の結果をもとに、太陽風打ち込みを模擬したイオン照射をおこない、ブリスタ構造の再現と生成タイムスケールの評価をおこなっている。また鉱物粒子の機械的摩耗実験や衝突実験もはじめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最も主要な目標であった、イトカワ表面における宇宙風化層の生成をはじめとする様々なプロセスの統一的な理解について、その概要がこの1年で判明した。また、それらの詳細を解明する実験(とくに太陽風照射実験)にも大きな進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに配分されると期待されるイトカワ粒子の分析をすすめていくとともに、小惑星での表面プロセス(とくに太陽風照射、機械的摩耗および衝突)を模擬した実験を進めることにより、これらのプロセスの詳細を明らかにし、タイムスケールの精密化をはかることにより、小惑星表面プロセスの統一的理解を目指す。また、アポロ計画により採取された月レゴリス粒子の分析を、イトカワ粒子の分析と同様におこない、これらの比較により、小惑星だけでなく大気をもたない天体表面でのプロセスを総合的に理解することを目指す。
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