研究課題/領域番号 |
24244090
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 淳 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (60344199)
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研究分担者 |
岡井 貴司 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (20356679)
中村 崇 琉球大学, 理学部, 講師 (40404553)
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
中島 礼 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (00392639)
加藤 亜記 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (00452962)
磯野 良介 公益財団法人海洋生物環境研究所, 実証試験場, 主任研究員 (80588583)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気候指標 |
研究概要 |
「間接指標は、炭素同位体比>酸素同位体比>Sr/Ca比の順でサンゴの成長速度(健康状態)に影響される」という仮説の検証を行なった。研究分担者者らにより、琉球大学瀬底研究施設の屋外水槽を用いて、ハマサンゴ(Porites australiensis)の長期飼育実験が実施された。実験には5つの元群体から切断されたクローン小群体が各光区に配置され、約6年間にわたり飼育された。これらは、骨格化学組成の種内変異および群体間変異を検討するのに適した試料群である。すべての群体について同様の分析を行ない、炭素同位体比も含めて、間接指標の頑強性を評価した。その結果、Sr/Ca比が酸素同位体比よりも群体の健康状態あるいは成長速度の影響を受けにくいことを示す結果がえられた。 サンゴ骨格の炭素同位体比は、古くから頻繁に分析されてきたが、その変動要因については議論が多い。上述の長期飼育実験では、海水の溶存無機炭素の炭素同位体比、水温、光合成活性、骨格成長量など、骨格の炭素同位体比に影響する諸変量を網羅しているので、確度の高い考察が行なえた。特に、骨格の炭素同位体比とPAM法により計測された光合成活性(Fv/Fm)に有意な相関が認められた。多くの群体について同様の検討を行った結果、「炭素同位体比は、光量や光合成量よりも、光合成の「効率」に規定される」とする仮説が支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
琉球大学瀬底研究施設の屋外水槽にいよるハマサンゴ(Porites australiensis)の長期飼育実験で得られたサンゴ骨格指標を用いて以下の2つの仮説については、十分に検証を行なうことができ、有効であることが確認された。また、公表論文として結果を報告することができた。 ・「間接指標は、炭素同位体比>酸素同位体比>Sr/Ca比の順でサンゴの健康状態・成長速度に影響される」 ・「炭素同位体比は、光量や光合成量よりも、光合成の「効率」に規定される」 一方、琉球大学瀬底研究施設の屋外水槽の光環境は、実際のサンゴ礁と比べるとやや光量が低い。そこで、実際のサンゴ礁での移植実験サンゴについて骨格組成の検討を行い、実環境下での間接指標の挙動を解明することが計画されたが、進捗に遅れが見られる。
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今後の研究の推進方策 |
琉球大学瀬底研究施設の屋外水槽によるハマサンゴの長期飼育実験は、3段階の光量条件で行なわれた。光量は、遮光スクリーンにより通常の-10%、-30%、-50%に減光されており、それぞれ水深約3m、5m、および10mの光環境に対応する。これらは、骨格化学組成の種内変異および群体間変異を検討するのに適した試料群であり、これらの骨格組成を分析し、サンゴが環境を記録する際の誤差の大きさを評価し、生物パラメータとの対比によりその要因として、光量の重要性を探る。特に、酸素同位体比とSr/Ca比などの骨格組成の成長速度依存性の評価検討を実施する。 また、産業技術総合研究所では、国内外の研究機関と共同で現在までに、フィリピン3地域、インドネシアSeribu諸島、ミクロネシア3地域、琉球列島石垣島、小笠原諸島父島より、現生サンゴ骨格の長尺柱状試料を採取した。これらのサンゴ柱状試料の採取には水中エアドリルおよびエンジンドリルを用いた。試料採取地点は、東アジアから東南アジアを経て、インド洋に及び、アジアモンスーン変動およびENSO変動の長期的変動を解析するのに適している。本研究課題では、1950年以前の海洋の水温塩分変動を復元するために、分析未了区間について分析を進め、さらに約2週間の時間分解能を目標に追加分析を実施する。酸素・炭素の安定同位体比の測定には、本申請課題で産業技術総合研究所に導入した質量分析計Isoprimeを、また、Sr/Ca比の測定には、同じく産業技術総合研究所所有のICP発光分光分析計(ICP-AES)を使用する。平成25年度はフィリピン、平成26年度はインドネシアの試料を重点的に分析、解析する。
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