研究課題
本研究提案は、遠隔的酸化還元反応によって生じる電子を直接的なエネルギー源とする微生物、電気合成微生物によって支えられた微生物生態系の存在を明らかにすること、さらにその化学環境を明らかにすることを目的とする。これまでの研究進捗状況を踏まえて、研究最終年度には、深海熱水現場環境での電気合成微生物群集の増殖実験を行った。沖縄トラフ伊平屋北熱水フィールドの人工熱水噴出孔に電極を設置し、現場ポテンショガルバノスタットによる計測を約2週間にわたって行った。設置当初200-300mV程度の起電力しか生じていなかったのに対し、7日目から突如起電力が600mVに上昇し、以後その起電力を保持した。この600mVの起電力は熱水と海水との酸化還元電位差に相当し、全くエネルギーロスのない電流生成が保持されたことを意味する。7日目に見られる起電力の上昇は、海水側の陽極側に起きた変化に起因すると考えられ、約2週間の現場実験終了後の陽極には微生物フィルムが形成されていたことから、電気合成微生物群集による海水中の酸素を用いた電子合成酸化還元反応が電子伝達を触媒した可能性が考えられた。現在、陽極に形成された微生物群集の群集構造の解析を進めており、現場における電気合成微生物群集の存在と機能を明らかにできると期待される。一方これまでの研究によって、実際の深海熱水チムニーを介して電子伝達が起きていることを現場で測定・実証した例はなかった。研究最終年度には、現場電気伝導度計を開発し、チムニーの内外での電子伝達が起きていることの直接計測を行った。その結果、チムニー構造の内外で、600mVの電位差が生じている計測データが得られた。つまり、自然深海熱水噴出孔のチムニーにおいて電気合成微生物群集が生育可能であることが明らかになった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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