研究概要 |
II)多孔性RA-MOFの開発と活性分子の化学的吸脱着による物理・化学現象の協奏 高還元剤である[Ru2II,II]とピラジンやフェナジンとの一次元錯体は、一次元鎖が束となってその隙間に一次元性の細孔を作る。この場合、[Ru2II,II]ユニットはドナーであるため、D-MOFと命名。そのままでは単なる常磁性絶縁体、もしくは半導体([Ru2II,II] S = 1)であるが、電子アクセプター(A)として振る舞うゲスト分子(e.g., NOなど)が細孔内に吸着されることで、界面で[Ru2] + G→[Ru2]δ+・・・Gδ-のように部分的酸化還元が起き、一次元鎖方向の電子のホッピング輸送を引き起こすことが期待される。このような系は、言わば“Creutz-Taubeイオンの一次元版”であるとみなすことができ、Calss-IIや-IIIの電荷移動を電子輸送という物理現象でダイナミカルに捉えることができる可能性を秘めている。即ち、ナノ界面の化学的電荷移動(ホスト・ゲスト相互作用)で誘起される電子輸送を実現できる可能性がある。本年度は、昨年度からの継続で、[Ru2II,II]とphenazineからなる一次元化合物の多孔性D-MOFを設計し、一酸化窒素(NO)をゲストとした選択的吸着について検討した。その結果、ドナー性を高めた[Ru2II,II]ユニットを用いたとき、ホスト・ゲスト相互作用により、選択的にNOを吸着することが明らかとなった。また、この相互作用によるホスト格子上の電気的な摂動を交流電場応答により捉えることに成功した。詳細は来年度の研究に継続するが、極めてレスポンスの高い電気信号を得ることに成功している。
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