研究概要 |
癌のような生体内の特定部位の可視化には、現状の蛍光プローブが抱える自家蛍光のない、発光型のプローブがイメージングに有利である。本研究では、新規のルシフェリンとルシフェラーゼの融合型発光プローブを開発するうえで、ルシフェリン骨格のベースとなる高輝度発光分子プローブの合成を始めた。 特に、生体深部からの光信号測定に有利な650ナノメートル以上の近赤外域での発光を目標にしたプローブ開発を目的としているため、ボロンジピロメテン(BDP)誘導体で、BDPをフランにより分子共役系を拡張した高輝度蛍光色素KFLを基本色素骨格の候補として選び、電子ドナーおよび電子アクセプターになる原子団の種類と導入位置の最適化構造を調べ、高輝度蛍光を実現する近赤外色素の設計を行う方針とした。この場合、分子骨格に電子ドナーとアクセプターを最適な位置で連結することにより、長波長するアプローチも検討する。単一分子の長波長化では、一般に分子骨格が大きくなるため、合成の難しさと分子の不安定さの課題があるが、色素団あるいは色素分子同士を繋いで長波長化するアプローチは、当該問題の回避に有効であるとともに、分子設計の自由度が高く、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)などを利用して長波長化できるメリットがある。連結型分子の骨格のKFLは、ストークスシフトを大きくできる利点もあるため、励起波長と発光波長を変化させるのに役立つとともに、内部消光を軽減させる効果もあるため、実用的に利用しやすいという利点がある。 新規発光ルシフェリンKFL誘導体の合成は、2-Methyl-4H-furo[3,2-b]pyrroleから2工程で、Dimethyl-{4-[(2-methyl-4H-furo[3,2-b]pyrrol-5-yl)-(2-methyl-furo[3,2-b]pyrrol-5-ylidene)-methyl]-phenyl}-amineを調製し、ベース色素の骨格の一部を完成させた。
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