研究概要 |
平成25年度の研究では、核酸構造が遺伝子発現過程に与える影響を『知る』ために、鋳型DNA鎖が形成するヘアピン構造や四重鎖構造による転写反応への影響を解析し、鋳型DNA鎖の構造安定性に依存して転写反応途中での停止(arrest)や滑り現象(slippage)が起こることを見出した(PLoS ONE, 9, e90580 (2014))。また、安定な四重鎖構造が翻訳伸長反応を停滞させることを見出し、mRNA上のどの位置で翻訳反応が停滞するのかを明らかにした(Angew. Chem. Int. Ed., 52, 5522 (2013)、Methods, 64, 73-78 (2013))。さらに、四重鎖構造で翻訳反応が停滞することで、発現されてくるタンパク質の構造形成が影響を受ける可能性を見出した(Nucleic Acids Res., 41, 6222-6231 (2013))。 核酸の構造形成に影響する人工分子を『生む』研究として、四重鎖構造と既存のリガンド分子との相互作用を詳細に解析した(Biochemistry, 52, 5620-5628(2013)、Methods, 64, 19-27 (2013))。また、細胞膜成分のひとつであるコリンイオンが、DNA三重鎖構造を安定化する機構を解析し、核酸構造に結合する新規リガンド分子の設計指針を得た(Sci. Rep., 4, 3593 (2014))。さらに、低分子化合物に結合する核酸配列を取得し、分子間相互作用に伴う速度論的な解析も行った(J. Am. Chem. Soc., 135, 9412-9419 (2013))。 核酸の構造安定性を遺伝子発現制御に『活かす』研究としては、四重鎖構造を安定化するリガンド分子を用いて、翻訳反応途中でのフレームシフトを制御する技術を開発した(Anal. Chem., 85, 11435 (2013))。
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