研究実績の概要 |
平成26年度は、『知る』研究、『生む』研究、『活かす』研究を包括的に進め、核酸の非標準構造に関するエネルギーデータベースの活用を行った。『知る』研究では、二重鎖領域末端のダングリングエンドに対する分子クラウディング環境の影響を明らかにした(ChemMedChem, 9, 2150 (2014))。また、計算科学的な手法を用いて微視的観点からDNAと分子イオンとの相互作用をエネルギーレベルで解析し、コリンイオンによる核酸構造の安定性に対する寄与を明らかにした(J. Phys. Chem. B., 118, 9583 (2014)、J. Phys. Chem. B., 118, 379 (2014))。一方で、コリンイオンとグアニン塩基の相互作用により、膜表面上で四重鎖構造が不安定化するという知見を基に、膜の表面上で四重鎖構造を形成するDNAからの転写量を増大させるシステムを『生む』研究へと発展させた(Nucleic Acids Res., 42, 12949 (2014))。また、機能性の人工分子『生む』研究として、アニオン性のフタロシアニンが、二重鎖構造のDNAが多量に存在する条件下でもテロメラーゼの活性を効率的に抑制できることを示した(J. Phys. Chem. B., 118, 2605 (2014))。さらに、人工ペプチド核酸(PNA)を合成し、カルパインでPNAを切断することにより、分子間で形成されていた四重鎖構造を解消させることに成功した(Org. Biomol. Chem., 13, 2022 (2015))。核酸の非標準構造を遺伝子発現制御に『活かす』研究として、これまでの研究から得られている、RNA高次構造の形成におけるステム領域の重要性に着目し、ステム領域を系統的に改変した人工リボスイッチによる遺伝子発現制御システムを構築することに成功した(Angew. Chem. Int. Ed., 54, 905 (2015))。 これらの研究から得られた成果は総説としてまとめ、国際的な学術雑誌に掲載した(Chem. Rev., 114, 2733 (2014)、Nucleic Acids Res., 42, 8831 (2014)など)。
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