研究概要 |
有機半導体は室温の数倍のエネルギー(約0.1eV)で分子が凝集し, 異種物質との接触により室温環境で最大の機能を発現し得る。その一例は生体機能に現れている。近年,高秩序界面の作製とその測定技術の革新によってその機能の根源が,分子間相互作用・分子振動・自発的無秩序化による界面準位がすべて0.1 eV程度のエネルギー領域にあり,これらが互いに相関・競合する現象に起因することが分かってきた。特に自発的構造乱れはバンドギャップ中に未知の準位を出現させ,無機半導体とは異なる界面機能が見出されつつある。本研究では,超高感度での電子状態測定により,分子の大きさと低い対称性等に起因する「自発的集合構造の乱れ」とその電子機能への影響を研究し,有機デバイス関連界面に普遍的な新しいエネルギー準位接続モデルを提案する。 本年度は,第一にUPSの超高感度化を目指した。一層の高感度化にはバックグラウンド電子を下げる必要がある。本研究では二次元検出器の活用に加え,低エネルギー光によるイオン化確率の増大現象と分子の光照射損傷の低減効果を利用して電気的測定に比肩できる世界最高の超高感度化を実現し,1016states/eV・cm3のバンドギャップ準位の検出に成功した。また,このバンドギャップ状態が膜の不活性ガス暴露によって分子の集合構造に乱れが入ることによって増加し,フェルミ準位がHOMOに近接することを突き止めた。一方,既に技術を確立したルブレン単結晶のバンド分散の測定を精密化し,結晶の保持法を研究して低温での分子集合構造のひずみの発生を克服し温度依存性測定を試み,バンド分散へのポーラロン効果を捉えることに成功した。上記に加え,多くの実験に成功し当初計画で予想した以上の成果を上げている。
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