研究課題/領域番号 |
24245040
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤岡 洋 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50282570)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 雲母 / GaN / スパッタ |
研究実績の概要 |
雲母板は透明かつフレキシブルで20インチを超える大面積の単結晶を安価かつ大量に入手することができる。従って、雲母板は人類が入手することのできる最大の単結晶基板であると考えることができる。本提案では、安価で柔軟な雲母板上に高効率の窒化ガリウムLEDアレイ直接発光ディスプレーを試作することを目的とし、さらに、雲母上の半導体素子をガラス、セラミックネなどの材料に貼り付けることにより、全ての構造材料に計算能力、通信能力、表示能力、発電能力、センシング能力等の知的機能を付与することも目的とする。H25年9月に生じた結晶成長用の装置を修理・調整し、復旧後に実験を再開した。本年度は、パルススパッタ法による雲母基板上への窒化物薄膜成長技術開発を継続し、発光素子開発のための要素技術を構築した。具体的には、発光層であるInGaN層のIn組成分布や、GaN薄膜のp型およびn型のドーピング、不純物拡散の有無を解析した。また、H24年度と本年度に開発した要素技術を用いて、雲母基板上にダブルヘテロ構造LEDの試作を行った。具体的には、AlNバッファー層挿入により得られたGa極性GaN薄膜上に、InGaNを活性層に用いたp-GaN(150 nm)/ InxGa1-xN (0.1<x<0.27) (50 nm)/ n-GaN(500 nm)ダブルヘテロ(DH)構造を作製した。X線逆格子マッピングの結果から、InGaN活性層はGaN薄膜に対して格子緩和を起こす事なくコヒーレント成長している事が明らかとなった。p型、n型オーミック電極にそれぞれNiとInを堆積した後、電流注入によってエレクトロルミネッセンス測定を行った。その結果、青色から緑色領域までの明瞭な発光が確認され、雲母基板上への窒化物半導体系LEDの動作に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は雲母基板上への窒化物半導体素子作製の要素技術開発とLED作製を目的とした。パルススパッタ法によって雲母基板上に作製した窒化物半導体ダブルヘテロ構造において、明瞭な電流注入発光を観測し、雲母基板上に窒化物半導体素子の作製が可能であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究において、結晶成長グループとデバイスグループが一体となって活動し、雲母基板上のフレキシブルLEDの試作とその動作確認を中心目標に据える。具体的にはInGaN多重量子井戸を活性層に用いたLEDの試作を行い、これらのLED動作の確認を行う。素子動作の実現にはエピタキシャル層内のIn組成分布やドーパント分布、雲母基板からの不純物の拡散等が重要となるのでフォトルミネッセンスやEDX等を用いて解析していく。特に発光効率の確認が重要となるので、液体ヘリウム温度における発光特性と室温における発光特性を詳細に比較していく。
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