雲母板は透明かつフレキシブルで20インチを超える大面積の単結晶を安価かつ大量に入手することができる。従って、雲母板は人類が入手することのできる最大の単結晶基板であると考えることができる。本提案では、安価で柔軟な雲母板上に高効率の窒化ガリウムLEDアレイ直接発光ディスプレーを試作することを目的とし、さらに、雲母上の半導体素子をガラス、セラミックネなどの材料に貼り付けることにより、全ての構造材料に計算能力、通信能力、表示能力、発電能力、センシング能力等の知的機能を付与することも目的とする。前年度までに開発した雲母基板上へのGaN結晶成長技術を用いて、本年度はフレキシブルLEDの試作を行った。まず、高輝度LEDの作製に不可欠なInGaN多重量子井戸構造の作製技術を開発した。Ga極性GaN/AlN/雲母基板の上に、5周期の[InGaN/GaN]量子井戸構造(MQW)を形成した。反射高速電子線回折像において2×2の表面再構成を有するシャープなストリークパターンが観測され、MQW構造が高い平坦性を有している事が分かった。また、高分解能X線回折測定を行ったところ、GaNとAlNの0002回折と共に、MQW構造に由来するサテライトピークが2次まで明瞭に観測された。これは、MQW構造内のInGaN/GaN界面が急峻であることを示唆する。また、カーブフィッティングの結果からMQW構造内の組成や膜厚は、[In0.12Ga0.88N(3 nm)/GaN(10 nm)]5であり、設計どおりであった。続いて、へき開によって薄片化した雲母基板を用い、フレキシブルなLEDの作製を試みた。その結果、湾曲した状態(曲率半径R = 7.6 mm)でも明瞭なEL発光を示すことが明らかになった。これらの結果から、雲母基板はフレキシブルな窒化物半導体デバイス用基板として極めて有望である事が明らかになった。
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