研究課題/領域番号 |
24245044
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田 健彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20220957)
|
研究分担者 |
荒木 保幸 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80361179)
坂本 清志 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30335228)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 超分子 / 不斉光反応 / 超分子不斉光化学 / 人工坑体 / 2-アントラセンカルボン酸 / ファージディスプレイ法 / キラル反応場 / キラルソフト界面 |
研究概要 |
本研究では、反応適用基質の拡大を指向し、より積極的な不斉反応場構築を検討した。具体的には、いかなる基質に対しても精緻で高選択的な認識が可能な坑体に注目し、人工坑体をキラル反応場として活用する超分子不斉光反応系の構築に取り組んだ。 人工坑体取得法としては、簡便かつ高効率に人工坑体を取得可能なファージディスプレイ法を用い、標的反応基質としてACの光二量体を用いた系について検討した。単離精製したAC光二量体 (ACD) を水溶性の高いPEGリンカーを介して末端にビオチンを導入し、標的リガンドとした。合成したACDリガンドと、10の10乗程度の多様性を有する抗体提示ファージを混合し、選択結合・結合ファージの単離精製、取得ファージの大腸菌への感染・増幅、そして前プロセスより過酷な条件下での標的ACDリガンドとの混合による、選択結合ファージの単離・精製過程を3~4回繰り返すことによりACD1に対し特異的に認識・結合する人工抗体を得ることに成功した。 得られたACD1を特異的に認識する人工抗体 (scFv) とACモノマーとの基底状態相互作用を検討し、ACと人工抗体の相互作用が示唆された。これらの知見に基づき、scFv をキラル反応場とするAC の超分子不斉光二量化反応を検討した。その結果、scFv 非存在下に比較してH-T型生成物であるであるACD1ならびに2の生成物比の飛躍的な向上が確認された。さらに生成物キラリティーに注目すると、ACD2において約27%の中程度の光学活性選択性が得られた。 以上の結果は、ファージディスプレイ法を活用して得られた人工坑体が、超分子不斉光反応の有効なキラル反応場として機能する事を実証しており、今後の展開により新規超分子光不斉反応系を構築が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、人工坑体の取得にはかなりの時間が必要だと予想していたが、幸い標的AC二量体に結合する人工坑体取得が効率よく進行した為、当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度も引続き 1.人工坑体をキラル反応場とする超分子不斉光反応系の創製に関する研究を推進する。加えて、ACを基質とする不斉光反応の有する根本的問題の解決="選択的不斉光反応系への展開"を検討する。具体的には、ACの光反応においてはキラル反応場に取込まれていないAC分子も同条件下光照射により反応し、ラセミ体を与える。このため、常に生体高分子を過剰量存在させる必要があり、高い光学収率と生成物収率を両立できる系とは成り得なかった。本研究では、この問題を解決するためキラル反応場に取り込まれた基質のみの選択的反応系への展開を検討する。 この目的を達成するには、キラル反応場と錯体を形成した反応基質のみ選択的に光反応を進行させる必要がある。この目的にとって最も有効な方法は、錯形成に伴い基質の吸収波長が長波長シフトする系を設定し、錯体を形成した基質の選択励起により、反応に導くことであると考えた。選択励起された光反応基質は、不斉反応場中においてエナンチオ区別的に反応が進行することが予想され、均一溶液系に存在する光反応基質は反応しないため、生体高分子ナノキラル反応場でのみ反応は進行することが期待され、光学収率の飛躍的な向上が見込まれる。
|