研究課題/領域番号 |
24245045
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡辺 宏 京都大学, 化学研究所, 教授 (90167164)
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研究分担者 |
松宮 由実 京都大学, 化学研究所, 助教 (00378853)
増渕 雄一 京都大学, 化学研究所, 准教授 (40291281)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子ブレンド / 相分離 / 鎖ダイナミクス / 相成長ダイナミクス / 非線形フィードバック / 絡み合い / 局所摩擦 / 熱力学的拘束 |
研究概要 |
絡み合いを示さない低分子量のポリイソプレン (PI) とポリ (p-tert ブチルスチレン) (PtBS) のブレンド系に対して、誘電測定と粘弾性測定を行ない、PI の大規模運動を反映する誘電データから PI 鎖の運動様式を推定し、さらに、粘弾性データからセグメント緩和の特性時間を推定した。その結果、高 Tg 成分である PtBS のセグメント緩和がPI の大規模運動の律速段階となっていることや、Marrucci 型のモデルを援用して、時間とともに増加する PtBS の運動長から PI の大規模運動の時定数τが予測できること、さらに、このτが相分離過程における時定数として使用可能であることなどを見出した。 また、相分離後に空間的拘束と熱力学的拘束を受けた鎖のモデルケースとして、スチレン-イソプレン-スチレン (PS-PI-PS) トリブロック共重合体の球状ドメイン内に封入されたプローブ PI 鎖の大規模運動を誘電測定で検出し、プローブ PI 鎖の運動モードの broadening の程度がその分子量によらないことを見出した。この結果は、プローブ鎖の大規模運動が、主に熱力学的拘束に支配されていることを示し、相分離初期の相成長に対する基礎的知見を与える。 さらに、鎖の形態と摩擦の関係を調べるために、PS メルトの伸長粘度の解析を行ない、鎖が高度に伸長・配向すると鎖間の相互作用が弱化して摩擦が減少し、その結果として、伸長粘度の hardening が抑えられることや、溶液系では溶媒が配向しないために摩擦低下がおこらず hardening が抑制されないことなどを見出した。この結果は、流動下の相分離過程に対する基礎的知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子ブレンド系の相分離過程を記述する基礎パラメタである絡み合い長については既に混合則が得られているが、もう一つのパラメタである摩擦係数(または成分鎖の大規模運動の時定数)についても実験的知見が得られ、また、熱力学的拘束の降下も考慮する必要があることが明らかとなった点で、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
実験的に得る絡み合い長と摩擦係数(または成分鎖の大規模運動の時定数)に基づいて時間依存型 Ginzburg-Landau (TDGL) 理論を修正し、相構造の時間発展を予想する。この予想を散乱測定の結果と比較して、実際の相分離時における鎖ダイナミクスと相成長の非線形フィードバックの効果について考察を加える。
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