本研究では、サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成技術を確立する。本年度は3年計画の最終年度として、サーファクタントであるCの堆積位置依存性を検討した。そのために、C堆積位置をGe/Si界面から離れた位置としたC/Ge/Siの積層構造において、Ge膜厚とC堆積量、さらにはGe堆積温度による成膜初期Geの結晶状態などが、緩和Ge薄膜の結晶性に与える影響を検討した。また、Ge/C/Si積層膜においてC-Si反応温度とGe堆積膜厚を最適化することで、高密度のGe量子ドット形成に関して検討した。 C/Ge/Si積層構造からの緩和Ge薄膜の形成においては、成膜したGeの初期結晶状態の影響が極めて大きいことが明らかになった。すなわち、アモルファス状Ge上にCを堆積した場合と多結晶状Ge上にCを堆積した場合では、Ge固相成長に影響するC量が大幅に異なった。アモルファス状Geでは、C≦0.25MLではGeがドット状に凝集し薄膜形成できないのに対して、多結晶状GeではC=0.15MLで緩和Ge薄膜を形成できる。このことはGe初期結晶状態によるC拡散速度の差に起因しており、初期結晶状態がランダムな系では薄膜形成に多量のCを要し、Ge結晶性が劣化することが分かった。また、多結晶状Geの場合、C-Ge結合により平坦性を向上できるが明確になった。 高密度Ge量子ドットの形成に関しては、C=0.25MLの条件において、Si-C反応温度、即ちc(4x4)構造の形成温度の最適化を検討したところ、750℃近辺で最も良好なGeドット形成を確認した。また、その際のGe堆積膜厚としては約3.5nm~5nmの範囲においてドット粒径が均一化することを明らかにした。 これらの結果は、来年度以降に実施する緩和Ge薄膜と量子ドットの選択的形成技術とデバイス応用を開発するための基盤技術であり、これらの知見が十二分に活かせると考えている。
|