研究課題/領域番号 |
24246007
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
生田 博志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30231129)
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研究分担者 |
田仲 由喜夫 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40212039)
田渕 雅夫 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 特任教授 (90222124)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超伝導材料 / 分子線エピタキシー法 / 鉄系超伝導体 / 低温物性 / エピタキシャル成長 |
研究概要 |
分子線エピタキシー法を用いて、NdFeAs(O,F)およびBaFe2(As,P)2薄膜の高品位化に取り組んだ。NdFeAs(O,F)薄膜では、表面平坦性が酸素供給量に大きく依存するため、その最適化を慎重に行った。また、装置改造により従来よりも高温での成膜を可能にした結果、薄膜の結晶性が大きく向上した。一方、BaFe2(As,P)2のP組成を様々に変化させた薄膜を成長し、全組成範囲で単相c-軸配向膜を得た。特に、MgO基板上に成膜すると超伝導転移温度が系統的にシフトすることを見出し、格子ミスマッチによる歪が原因であることを明らかにした。 また、NdFeAs(O,F)薄膜をMgO双晶基板上に成長し、粒界接合を作製した。当初、フッ素ドープの際にフッ素が粒界に沿って優先的に拡散し、粒界近傍の結晶性が低下する問題が見られたが、膜厚を厚くし、ドライエッチングにより不要部分を除去することでこの問題を回避した。測定した電流電圧特性は、ジョセフソン接合で期待されるRSJモデルと、磁束フローモデルの和でよく記述できる。また、接合抵抗は小さく、ヒステリシスが観測されないため、結晶粒界が金属的であることがわかった。一方、粒内臨界電流値と比較することで、高温超伝導体と比べて、粒界角度依存性が小さいこともわかった。これは、超伝導対称性が異なるためだという可能性が考えられる。 さらに、積層型超伝導接合の作製に向け、NdFeAsO薄膜上に絶縁層としてCaF2を成長したところ、表面が非常に荒いことがわかった。しかし、CaF2を低温で成長後に高温アニールすると、表面が平坦化することを見出した。そこで、成長温度やアニール温度を最適化したところ、表面粗さが大きく改善した。ただし、試料表面にはピットの形成が見られた。ピット部以外は十分な平坦性を有しているため、今後はピット形成を抑制する手法を確立する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を進めていく中で、積層構造のわずかなエピタキシャル乱れが特性に大きな影響を与えることがわかった。そのため、精密な構造解析が必要であり、その準備のために期間延長の必要が生じたが、その後、順調に実験を進めることが出来、最終的にはほぼ計画通りに進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
NdFeAs(O,F)薄膜については、以前よりも高温での成膜が可能になった結果、結晶性が大きく向上したが、成膜後のフッ素アニールによるフッ素ドープが困難になるということがわかった。今後、高い結晶性を維持しつつ、効果的なフッ素ドープ法を開発する必要がある。BaFe2(As,P)2については、基板とのミスマッチによる歪が特性に大きな影響を与えることがわかり、相図をより詳細に調べることとする。一方、SIS構造の作製に向けた絶縁層薄膜の成長については、CaF2のピット形成を抑制する成長条件を調べる。また、MgOなど他の絶縁体についても、必要に応じて成膜を行って調べる。
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