研究課題/領域番号 |
24246010
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平山 秀樹 独立行政法人理化学研究所, 平山量子光素子研究室, 主任研究員 (70270593)
|
研究分担者 |
藤川 紗千恵 独立行政法人理化学研究所, 平山量子光素子研究室, 特別研究員 (90550327)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 深紫外LED / AlN / AlGaN / MOCVD / Si基板 / 貫通転位密度 / 光取り出し効率 / 内部量子効率 |
研究概要 |
深紫外高効率LEDは、医療、殺菌・浄水、生化学産業などへ応用において大変期待されており、その高効率化が求められている。しかし、AlGaN深紫外LEDは現在、絶縁性のサファイア基板上に形成され、横注入構造をとっているため、n型AlGaNの大きなシリーズ抵抗のため高出力化が難しい。またサファイア基板を伝搬する導波モードの発生により、光取り出し効率が低い。本研究では、Si基板上にAlGaN深紫外LEDを成長し、ヒートシンクへの直接ボンディングの後、LED層にダメージのないSi基板のリムーブを行うことで、縦型・大面積の深紫外LEDを実現する。シリーズ抵抗の低減と光取り出し効率の向上、ならびに大面積直接ヒートシンクにより、2桁程度の高出力化を実現する。殺菌用途波長(260-280nm)おいて、シングルチップで5ワット程度の高出力深紫外LEDを実現する。 H24度ではまず、Si基板上高効率LEDにおいてもっとも重要である低貫通転位AlNバッファーの結晶成長方法の開拓を行った。本研究ではSi基板上に加工したストライプ上へのAlN横方向埋め込み成長(ELO)による貫通転位の低減とクラックの防止を提案していたが、より効果的な2次元格子状パターン加工基板上へのELO成長を行い良好なバッファーを形成した。サファイア基板上に三角格子状パターンを形成した基板(PSS)上にAlNを成長し、形状の制御された結合ピラーの自己形成に成功した。さらに結合ピラー構造上に埋込み成長を行うことにより平坦なバッファーの作製に成功した。結合ピラーバッファーは光取り出し効率向上に極めて有効である。また、ピラー内には貫通転位がほとんど存在しないため、高い内部量子効率の実現に有効である。さらに、透明p型AlGaNを用いた深紫外LEDの実現に成功し、光取り出し効率の向上により外部量子効率5%の高効率深紫外LEDを実現した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度で新たに提案・実現した結合ピラーAlNバッファー構造は、縦方向伝搬特性による光取出し効率の向上、ならびに、極低貫通転位密度による内部量子効率向上の両方の効果において、従来提案していたストライプ上のELO成長バッファーよりも優れた構造である。また、形状の制御された結合ピラーの成長方法を新たに発見したことは学術的にも意義が大きい。深紫外LEDの高効率化に有効な新しいバッファーの形成方法を見つけた点で、本研究は大きな進歩を遂げたと考えられ、AlNバッファーの開拓に関して研究目標を達成したと缶上げられる。今後Si基板上に同条件を移行すれば、高効率・高出力深紫外LEDの実現が可能である。 また、H24年度研究として予定していた「p型コンタクト層の改善による光取出し効率の向上」に関しては予想以上の大きな成果を達成した。当初、p型AlGaNを用いた深紫外LEDは、ホール濃度が極めて小さいため実現不可能であると考えられていたが、本研究では本年度、高Al組成p型AlGaNを用いた深紫外LEDの動作に成功しさらに、透明p型AlGaNコンタクト層と高反射p型電極を用いて光取出し効率を以前の1.5倍以上に向上させることに成功した。透明コンタクト層を用いれば近い将来、深紫外LEDの効率を青色LEDの効率(~80%)に近づけることが可能である。今後、Si基板を用いた高出力深紫外LED実現にとって極めて大きなブレークスルーであると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究ではH24年度において、結合ピラーAlNバッファーと透明p型AlGaNコンタクト層を用いた高効率深紫外LEDの2つの技術開拓をいずれもサファイアを用いた結晶成長で実現した。今後はこれらの技術をSi基板上に移行することで高効率・高出力深紫外LEDの実現を進める予定である。結合ピラーAlNをSi基板上に成長し、クラックの無い貫通転位の非常に低いバッファーを形成する。結合ピラーバッファーはクラックの防止に関しても、ストライプ上ELOバッファーより優れており、より安定したバッファーを供給できると考えられる。Si基板上に形成した結合ピラーAlNバッファー上に透明p型AlGaNコンタクト層を用いた深紫外LEDを作製し、深紫外LEDを動作させる。さらに、LEDをヒートシンクにメタルボンディングし、ウェットエッチングを用いてSi基板をリフトオフし、縦型の深紫外LEDを作製する。透明コンタクト層を用いた縦型構造LEDの光取出し効率は50%以上の高い値が期待され、深紫外LEDの外部量子効率は30%程度が実現できると考えられる。H25年度では、主に、Si基板上における結合ピラーAlNバッファーの形成と透明p型AlGaNを含む、Si上深紫外LEDの結晶成長の開発、H26年度ではSiリフトオフと素子形成の研究を進める予定である。
|