研究課題/領域番号 |
24246011
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
王 学論 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 上級主任研究員 (80356609)
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研究分担者 |
天野 建 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (10392581)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 半導体物性 / 光物性 / 先端機能デバイス |
研究概要 |
高い空間指向性を持つ発光ダイオード(LED)は様々な応用分野において強く求められている。我々は微小リッジ構造におけるエバネッセント光・伝播光変換現象の研究において、発光領域をリッジ構造の中心付近に局在させることによって、自然放出光はリッジに直交する面内において高い指向性を持って放出される現象を見出した。本研究は上記現象を微小錐台構造に発展させたものであり、その目的は発光領域が構造の中心付近に局在された微小錐台を作製し、エバネッセント光・伝播光変換現象を全ての面内方向において発現させることによって、発光が全ての方向において高い空間指向性を持ち、しかも目的・応用に応じて指向性をある程度自由に設計できる革新的高効率LEDを開発することである。 平成25年度では、InGaAs/GaAs量子井戸を発光層に用いたGaAsリッジ構造の作製および発光特性評価を行った。具体的に、まず、フォトリソグラフィーおよびウェットエッチングによって、InGaAs/GaAs量子井戸層を幅100-200nmのストライプに加工した。次に、上記試料上にGaAsをMOCVD法により再成長し、その表面を平坦化させた。最後に、ストライプ状のInGaAs量子井戸が上部平坦面の中心に来るようにGaAsリッジ構造を形成した。得られた試料の発光強度の空間分布を角度分解フォトルミネセンス法で評価したところ、発光は40°~50°の放射角を持ってリッジの上部平坦面の垂直方向に強く指向して放射されているのが分かった。これにより、本研究で提案した指向性実現の原理が初めて実証された。 また、微小円錐台の作製に関して、ドライエッチングのマスクを従来のフォトレジストからSiO2膜に変更することによって、AlGaInP微小円錐台の作製に初めて成功した。これにより、赤・黄色波長帯での指向性制御の実験が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
InGaAs/GaAs量子井戸リッジ構造を用いて、フォトルミネセンスによる観測ではあるものの、指向性の発現の観測に初めて成功したのは、大きな成果であると言える。また、電流注入デバイス実現のための作製プロセスの開発もほぼ終了している。 一方、InGaAs/GaAsリッジ構造の作製・評価およびAlGaInP微小錐台の作製に予想以上に時間がかかったので、当初予定していた微小領域化されたInGaN/GaN量子井戸の埋め込み再成長実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
InGaAs/GaAs量子井戸リッジ構造に関して、電流注入デバイスを作製し電流注入の条件において指向性の発現を実証する。 AlGaInPおよびGaN系微小錐台構造に関して、まず微小領域化された発光層の埋め込み再成長の条件を確立する。Alを含む材料の再成長が一般的に難しいとされている。平坦なAlGaInP再成長層が得られない場合、GaPの使用を検討する。次に、フォトルミネセンス評価により指向性が確認された場合、さらに電流注入デバイスの作製を進める。
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