研究概要 |
本研究は,先駆的な光放射圧制御微粒子レンズによるフォトニック・ナノジェット(PNJ)制御,フェムト秒パルスレーザーによる非熱的アブレーション加工および定在場スケール変位計測を,格段に発展・融合することにより, 独創的な超高アスペクト比微細形状加工・計測原理の確立を目的としている. 回折限界をはるかに超えるビーム径と数μmのビーム長をもつ,フェムト秒パルスPNJの加工特性を明らかにすることにより,幅100nm以下,深さ数μm以上の加工を可能にする.さらに,このような超高アスペクト比加工では,材料特性に依存する加工レートのばらつきを補償することによる,加工深さ制御が不可欠であるため,定在場スケールを利用した加工量のその場計測を導入し,加工の高精度化をめざす. 本年度は,フェムト秒パルスPNJの制御特性と加工分解能との関係を詳細に検討し,超高アスペクト比微細形状加工の実現性および精度限界などを検証した.まず,前年度に設計・試作した,チューナブル・フェムト秒チタンサファイアレーザー光源を用いた独自のフェムト秒パルスPNJ生成基本光学系を用いて,表面精度や結晶性などの点で加工現象解析に適している半導体用単結晶Siウェハを試料とした基礎加工実験を遂行した.その結果,従来の集光ビームとPNJを用いた加工現象を比較し,PNJを用いたほうがアスペクト比の高い加工が可能であることを確認した.さらに,最適なビーム状態を高い再現性で実現するため,フェムト秒パルスPNJ制御,加工ビーム位置およびショット数制御手法を開発し,アブレーションクレーター形状(加工痕)の詳細なAFM計測から,加工基板から離れた位置で発生したPNJを用いて穴径822nmの加工が可能であることを実証し,本研究で提案するマイクロ球のレーザートラップとフォトニックナノジェットを組み合わせた加工法が有用であることを示した.
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