研究課題/領域番号 |
24246028
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高谷 裕浩 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243178)
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研究分担者 |
道畑 正岐 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70588855)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フォトニック・ナノジェット / 超高アスペクト比微細加工 / 微粒子レンズ / 光放射圧 / フェムト秒パルスレーザー / 非熱的アブレーション加工 / 定在場スケール / 加工量計測 |
研究実績の概要 |
本研究構想は,先駆的な光放射圧制御微粒子レンズ効果によるフォトニック・ナノジェット(PNJ)の生成とエネルギー空間分布制御およびフェムト秒パルスレーザーPNJによる非熱的加工を利用した,独創的な超高アスペクト比微細形状加工原理を確立し,さらに定在場スケール変位計測を格段に発展・融合することにより, 3次元微細形状加工・計測融合技術の確立を目的とするものである. 本研究課題では,回折限界をはるかに超えるビーム径と数μmのビーム長をもつ,フェムト秒パルスPNJのナノ材料除去特性に基づき,幅100nm以下,深さ数μm以上の高効率微細加工を可能にする.さらに,高精度な加工深さ制御を実現するため,超精密定在場スケールを利用したその場加工量計測との融合をめざす. 本年度は, 微粒子レンズ位置制御によるフェムト秒パルスPNJの加工制御特性について検討した.照明条件によってフェムト秒パルスPNJ加工ビーム位置を変化させ,AFM計測によるアブレーションクレーター形状の詳細な解析を行った.それによって得られた,フェムト秒パルスPNJの制御精度と加工横分解能及び縦分解能に関する知見に基づき,定在場スケール変位計測法に新たな手法を導入し,特に加工深さ計測の高精度化について検討した.さらに,光放射圧場解析シミュレーションによってPNJ定在場光放射圧の力学的挙動を明らかにし,定在場スケールの安定化や高分解能化などについて多方面から検討した.その結果,独自に構築した,分解能10nm,最大測定変位2.6μmの白色光共焦点光学系を用いた定在場スケール補間技術によって,分解能10nmに達する高精度マイクロ球変位計測手法を開発した.さらにそれを用いて,約60nmの分解能による3次元自由曲面形状のスキャニング測定を実現し,超精密定在場スケールによるフェムト秒パルスレーザーPNJ加工量計測の実現性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,フェムト秒パルスPNJ加工とPNJ定在場スケール変位計測を融合することにより,その場計測によるフェムト秒パルスPNJ加工制御技術の確立を目的として,これまで研究代表者らが開発した定在場スケール変位計測法を,加工深さが数マイクロメートル及びアスペクト比が数十という超高アスペクト比微細形状の変位計測に適用するため,新たな高精度化手法の開発を計画した.具体的には,[1] 加工基礎実験によって,その場計測に求められる計測レンジや精度などの基本仕様に関する知見を獲得し,それに基づいて変位計測の要求精度を明確化し,力学特性解析に基づいた新たな計測原理による高精度化を検討するとともに,[2] 高精度定在場スケール計測用光学系を設計・試作し,変位計測精度の検証実験を計画した.まず,[1]の研究課題を進め,PNJ解析シミュレータをベースとした光放射圧場解析シミュレーションを遂行してPNJ定在場光放射圧の現象解明を行った.その結果,定在場スケールの安定化や高分解能化などに関する新たな知見を獲得することができた.しかし,数十nmの極近傍表面におけるマイクロプローブ球の不安定化現象は,当初予想されていない現象であり,加工量計測への適用性について十分な対策方法の検討が新たに必要となった.一方,[2] の研究課題の遂行によって,白色光共焦点光学系を用いた定在場スケール補間技術によって十分な加工深さ計測分解能が実現できることを実証し,実施計画で目標としていた以上の計測精度が達成された点において,当初の計画以上の進展があったと評価できる.以上の研究経過から,本年度の研究計画としては十分な達成度が得られているが,研究計画の段階では予測できなかった新たな課題が見いだされ,今後はその対応策の検討が必要になったという点を考慮すれば,おおむね順調に進展しているという評価になる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの研究成果によって,従来の集光ビームによる加工よりも高いエネルギー効率,ナノメートルオーダの横分解能,高効率な材料除去特性が実現できるなど,フェムト秒パルスPNJによる単結晶Siの優れた加工特性が実証されている.さらに平成26年度は,その場加工量計測への適用性が高く,超精密定在場スケールを利用した,分解能10nmに達する高精度マイクロ球変位計測手法を確立しており,今後の推進方策として,高精度だけでなく高効率な加工制御方法への研究展開を図る.これまで,高分解能な加工量制御を行うためには,微粒子レンズと加工基板の変位量を高精度に制御する必要があることを明らかにしているが,平成26年度の研究によって確立された高精度マイクロ球変位計測を適用することによって,加工中における加工量の定量的評価に基づいた,より高精度で高効率な加工制御方法が確立できる可能性がある.従って,平成26年度までの順調な研究達成度に加え,加工および計測に関連する基礎現象の新たな知見が獲得されたことによって,当初の研究計画よりも新たな展開の可能性が拡がったといえる.そこで,研究計画の軽微な変更で新たな研究成果が期待できる研究推進方策として,光放射圧による不安定挙動を回避するために,より安定な微粒子レンズ位置決め装置を新たに導入し,未解明な点が残された,非熱的過程および多光子吸収過程による加工現象解析および加工効率評価の確立に注力する.それによって獲得されると予想される高効率なナノ加工量制御手法は,高アスペクト比形状加工のみならず,これまでに無い新たな3次元微細レーザー加工技術への展開も期待されると考えられ,当初の研究計画全体の達成度をおおむね確保するとともに,研究計画の追加による新たな進展もめざす.
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