研究課題/領域番号 |
24246032
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
矢野 智昭 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 上級主任研究員 (90358218)
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研究分担者 |
芦田 極 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 研究グループ長 (10356363)
笠島 永吉 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (40356762)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能要素 / アクチュエータ / 球面 / 球対称 / 幾何学 |
研究概要 |
多面体にもとづいて球面センサ、球面支持機構、球面減速機を設計・試作し、球面アクチュエータと組み合わせて球面駆動システムを構築する。この過程で、従来のモータ設計・解析・制御理論を3次元ベクトル空間に拡張する。同時に、多面体幾何学を、一般的な電機機械システムの設計・解析・制御理論に展開する。平成24年度は、球面センサと球面支持機構を開発する。 球面センサとして、誘導巻線、イメージセンサ、ホール素子を検討した。誘導巻線は、「高調波重畳方式」を検討した。姿勢検出は原理的に可能だが、現状ではインダクタンス曲線が最適になる形状を決定するのが困難である。イメージセンサは、レーザマウスを2個使用し、ロータ姿勢を1回転数度以内で検出可能で、フィードバック位置決め制御が可能であることを確かめた。誤差が累積するため、絶対位置センサとの併用が必要である。ホール素子を多数配置したセンサは誤差が大きいが、絶対姿勢を検出できた。球体にマーキングして画像処理を行う絶対位置姿勢センサを試作し、実験を開始した。 球面支持機構は、誘導巻線、空気圧支持、球体ベアリングを検討した。誘導巻線は、駆動用誘導巻線に磁気支持用電流を重畳することで非接触支持が可能なことを理論的に確認した。浮上支持には大電流が必要である。空気圧は摩擦を測定限界以下に低減できたが、回転中心がぶれる問題があった。球体ベアリングは摩擦が大きいが、駆動トルクが大きいとダンピングが効いて位置決めが行いやすいことがわかった。 球面モータ研究の到達点と問題点を明らかにする目的で、学位論文をまとめた。多面体にもとづく座標系と基底の取り替え行列にもとづく座標変換を導入して過去の研究を記述することにより、従来のモータ理論を3次元空間に拡張する道筋と、マクスウエルの方程式を出発点として3次元のモータ理論を展開する道筋がより明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、球面センサと球面支持機構を開発し、これらの開発を通して多面体幾何学を、一般的な電機機械システムの設計・解析・制御理論に展開する方針を導くことと、モータ理論の3次元空間への拡張をはかることを目標としていた。 球面センサは、当初の予定通り、誘導巻線、イメージセンサ、ホール素子を検討した。誘導巻線、レーザマウスを2個使用するイメージセンサ、ホール素子を多数配置したセンサの特長と問題点を明らかにした。絶対値センサとマウスセンサの組み合わせが現状では最適である。ホール素子より高精度の絶対姿勢センサとして、球体にマーキングして画像処理を行う絶対位置姿勢センサを試作し、実験を開始した。 球面支持機構は、当初の予定のうち、誘導巻線、空気圧支持、球体ベアリングを検討した。固体潤滑支持は今後の課題である。誘導巻線に関しては、駆動用誘導巻線に磁気支持用電流を重畳することで非接触支持が可能なことを理論的に確認した。いっぽう、浮上支持には大電流が必要であり、他の支持との併用が現実的であることがわかった。空気圧は摩擦を測定限界以下に低減できたが、回転中心がぶれる問題があった。球体ベアリングは摩擦が大きいが、駆動トルクが大きいとダンピングが効いて位置決めが行いやすいことがわかった。 球面センサ、球面支持機構ともにステータに内接する準正多面体の頂点ないしは辺の中点に配置すると対称性により特性が向上する。また、基底の取り替え行列にもとづく座標変換により、制御も容易になることが判明した。モータ理論を3次元空間に拡張する道筋をつけることができた。 したがって、目的をおおむね達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画は順調に進んでおり、特に修正する点はない。 当初の計画に沿って、平成25年度は平成24年度に試作した球面センサ、球面支持機構を球面アクチュエータと組み合わせて球面駆動システムを構築する。また、球面減速機に関して、磁気減速機、摩擦車、およびワブル機構を3次元空間に拡張した構造を検討し、有力な候補について試作・実験をおこなう。 これらの検討を通して、一般的な電機機械システムに関して、多面体幾何学を導入した設計理論体系の構築を目指す。 平成26年度に試作予定である球面駆動システム評価装置に関して、構造の検討を開始する。 平成24年度に、マクスウエルの方程式を出発点としてモータの設計理論を3次元空間に拡張して記述する道筋を検討した。検討結果にもとづき、この理論体系を書籍にまとめ上げる準備を開始する。
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