研究課題/領域番号 |
24246037
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
花村 克悟 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20172950)
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研究分担者 |
牧野 俊郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111941)
宮崎 康次 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70315159)
高原 淳一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273606)
森本 賢一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90435777)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エバネッセント波 / 表面プラズモン / エネルギー変換 / 熱光起電力発電 |
研究概要 |
本研究は、放射体表面に誘起される近接場光(エバネッセント波)、およびこの近接場光と表面近傍の伝ぱ光との合成波である表面プラズモンを自在に波長制御できる、周期的な微細構造や薄膜構造などの表面性状を、放射体表面近傍の電磁波動論や固体物性論などに基づいた分光学的アプローチにより明らかにするとともに、それを用いた、電力や光照明さらに電磁波輸送など画期的なエネルギー変換を試みることを目的とする。 本年度(平成24年度)に行った数値シミュレーションを通して、向い合せた2つのピラーアレイ表面構造により,近接場ふく射輸送の波長制御が可能となることが明らかとなった。このとき、ピラー側面間の隙間には表面プラズモン干渉に伴う強電界が生じるとともに、その表面の電子の粗密波が、隙間の深さ(ピラー高さ)により、特定の波長において共鳴が生ずることがこの波長制御の基本原理であることを示唆した。さらに、このピラーアレイ構造は、電子線描画装置および反応性イオンエッチング装置を用いて製作可能であることも示した。一方、GaSb半導体(感度波長1.8ミクロン)を用いた光起電力電池を製作し、平滑面放射体を上記の波長以下まで近づけることにより、発電密度は、通常の伝ぱ光を用いた場合のおよそ4倍まで高くなることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周期的微細構造のピラーアレイによる近接場光の波長制御のメカニズムが数値計算により明らかにされつつある。また、この波長制御効果が向かい合うピラーアレイ構造の配置に依存しないことなど、その詳細についても明らかにされつつある。また、24年度に導入した反応性イオンエッチング装置により、このピラーアレイ構造がタングステン表面に製作可能であることも確かめられている。さらにそれと組み合わせる光起電力電池の製作を行い、近接場光効果による発電密度の向上も捉えることに成功している。この電池表面に周期的構造を施すことには着手できていないが、概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
高温に維持された放射体と光起電力電池を数百ナノオーダーの隙間を介して設置する方法について、苦慮している。研究レベルでは、双方を完全に切り離して保持することができるが、その隙間を定量的に把握することができない。一方、スペーサーを挟むことも考えられるが、それによる熱損失あるいは電池の熱破損をどのように避けるか、が今後の大きな課題となる。現在、シリカによる細いスペーサーの製作に挑戦している。また、ピラー構造のアスペクト比を高くする手法について、レジストの耐消耗性を向上する方法を数種類試すことを計画している。これらを総合して、ピラー構造を向い合せた選択波長近接場光発電システムの構築にこぎつけることを目指す。さらに、これらの構造をタングステンフィラメントに施すことにも着手し、選択波長白熱電球の実現を目指す。
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