研究課題/領域番号 |
24246045
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
新井 史人 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90221051)
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研究分担者 |
川原 知洋 九州工業大学, 若手研究者フロンティア研究アカデミー, 准教授 (20575162)
丸山 央峰 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60377843)
魚住 信之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40223515)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 先端機能デバイス / 細胞計測 / 生物・生体工学 / ナノバイオ |
研究概要 |
大きさ約2 μmのラン藻を対象として,細胞の局所環境制御とマルチパラメータ計測を高速かつ連続して行うために,マイクロ流体チップ内にロボットを組み込み,これを非接触で操作するシステムを構築する.ラン藻の粘弾性を計測するための微細なプローブをナノ加工により設計し,試作する.これをロボットの先端に取り付けて,マイクロ流体チップの内部に組み込む.また,ラン藻を一つずつ送り出して計測部に固定する搬送機能の基礎実験を進める.ロボットは磁気駆動によって位置決め制御を行い,浸透圧変化による細胞の粘弾性計測を試みる.本年度は以下の4つの項目を実施した. (1)微細加工技術・システム構築:力計測プローブ及び静電マイクロセンサを搭載したマイクロ流体チップを,シート状に微細加工した構造物を複数積層する積層マイクロ組立プロセスにより作製した. (2)細胞計測・制御:力計測プローブ及び静電マイクロセンサの設計及び試作を行った.プローブ及びセンサは我々が独自に開発した磁気駆動技術及び静電駆動を適用した.プローブ及びセンサはチップ内の摩擦の影響を低減し,プローブを高精度に位置決めするため変位縮小機構を導入した.計測時に俯瞰画像とラン藻の拡大画像を同時に取得可能な正倒立顕微鏡システムを構築し,高速ビジョンによる変位計測が可能なシステムを構築した. (3)環境計測・制御:マイクロ流体チップ内でラン藻を1つずつローディングするための流体制御システムを試作した.また,微細加工により作製した限定空間において単一のラン藻(野生株)を用いた呼吸速度及び光合成による糖(グルコース)合成速度を計測した.また,光強度の糖合成速度への影響についても単一ラン藻を用いて評価することに成功した. (4)細胞計測・評価・機能解析:ラン藻の遺伝子不活化株を用意し,浸透圧ストレス下でのラン藻のマルチパラメータを計測し,正常株と比較した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の特色は,マイクロ流体チップ内にマイクロ・ナノロボットを組み込み,光合成細胞であるラン藻のマルチパラメータ(機械的特性:弾性・粘性,大きさ,電気・化学特性)をオンチップで高速かつ連続的に計測する点にある.今年度は機械的特性計測のためにラン藻へ力を印可する可動プローブ部と静電マイクロ力センサを有するマイクロ流体チップを作製した.微細加工条件の調整により,オンチップでの可動プローブ及び静電マイクロセンサの安定な駆動を実現しており,ラン藻とプローブの力学的相互作用を計測するシステム構築に向けて順調に進展している.化学特性計測においては,微細加工により作製した限定空間において単一のラン藻を用いた光合成によるグルコース合成速度の計測に成功した.オンチップでの単一ラン藻を用いた糖生成能の評価は世界的に初でありこの成果の意義は大きい.また流体制御技術を用いたラン藻のローディング機構の試作も行っており,フロー系でのラン藻の連続計測に向けた準備が進んでいる.以上のように本研究はラン藻のマルチパラメータの高速・連続計測にむけて順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
特に大きな問題点はないが,引き続き以下に沿って進める. (1)微細加工技術・システム構築:微細加工技術により,マイクロ流体チップを作成する.高剛性のマイクロ流体チップを構築するために,ガラス材料とシリコン材料を利用してシート状に微細加工した構造物を複数積層して,積層マイクロ組立プロセスにより組み立てることで力計測プローブを有するマイクロ流体チップを製作する.この方法により,マイクロ流体チップの機械的剛性をあげ,形状安定性を向上する. (2)細胞計測・制御:計測システムに光ピンセットを組み込んで細胞をトラップできるように改良する.細胞の変形には我々が独自に開発した磁気駆動技術と静電駆動を適用する.磁気駆動ではmNオーダーの大きな出力が得られる.静電駆動はシステムをコンパクトにできる利点がある.粘弾性を高速かつ安定して計測するために,ロボットに働く抵抗や外乱を低減するための解析を行い,プローブの駆動部に気液界面を形成して,静電操作と変位計測を安定して行えるように改良する.また,変位縮小機構により,位置決め精度を向上する.そして,静電マイクロセンサによる力計測と,画像情報による変形計測によりオンチップで機械的特性の計測を行う. (3) 環境計測・制御:マイクロ流体チップの流体制御を行い,ラン藻を流路内でローディングしながら計測位置に光ピンセットで固定する搬送機能をシステムに実装する.これを計測系とリンクして,ラン藻の粘弾性を計測する.また,微細加工により作製した限定空間においてラン藻のマルチパラメータを計測する. (4)細胞計測・評価・機能解析:ラン藻の遺伝子不活化株を作成した後の確認テスト,浸透圧刺激に対するマルチパラメータ変化を計測し,正常株と比較する.これによりラン藻の浸透圧調整機構の仕組みと機能の解析を継続する.
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