研究課題/領域番号 |
24246048
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
滝川 浩史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90226952)
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研究分担者 |
清原 修二 舞鶴工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (40299326)
金子 智 神奈川県産業技術センター, 電子技術部, 研究員 (40426359)
山田 健二 石川工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (50249778)
羽渕 仁恵 岐阜工業高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (90270264)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フィルタードアーク蒸着 / ダイヤモンドライクカーボン膜 / 高品質化 / 前処理 / 均一成膜 / 膜厚制御 / 微細加工 |
研究概要 |
真空中で発生させたアーク放電プラズマを用い,異物レスで均質な高品質ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜を形成可能なセミオート化フィルタードアーク蒸着装置を用い,Si基板上への均一なDLC膜の創製を行うとともに,同DLC膜の微細加工を実施した。本年度の主な成果は次のとおりである。 (1) 均一膜厚制御:膜厚の制御に向け,より確実に膜厚を把握するため,光学膜厚モニタの光学設計・取り付け方法・位置をリファインした。 (2) Arイオン銃を用いたエッチング:Arイオンで前処理ができることがわかったため,これを利用して,DLC膜を均一にエッチングできるかどうかを追究した。その結果,基板を3次元的に適切に運動させることで均一エッチングが可能であることを明らかにした。 (3) 微細加工:これまでポリシロキサン(ポジ型レジスト)を用いていたが,今回ネガ型レジストに変更してみた。その結果,加工限界が800nmから40nmに改善できた。 (4) カッターおよび微細孔への展開:機械的微細加工ツールとして,マイクロドリルやカッターがある。今年度もカッターへの適用を検討し,アルミ合金だけでなく,銅や真鍮もドライ加工が可能であることを明らかにした。また,微細構造物へのコーティング加工ができるかどうかを把握するため,直径2mm,深さ10mmの細孔内面へのコーティング試験を実施し,内側面および底面へのコーティングを達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において,静電トラップの組み込みと,プラズマビームのアップライト輸送制御とによって,異物(陰極副生ドロップレット)の基板への付着数に関し,膜厚100nmあたり30個/mm2を実現した。これは当初の目標50個/mm2の約半分を達成した。また,その後,ピンポールの観察を行ったが見いだされなかった。従って,十分高品質のDLCを形成するシステムおよびノウハウを確立できたと言える。 前処理テスト用に導入したArイオン銃を利用して,4インチSiウエハ上に均一膜厚で形成したDLC膜を,均一に除膜(エッチング)できるかどうかの技術開発に取り組んだ。その結果,基板の単純回転の場合,エッチング速度分布は10%程度であったが,回転運動に加え,振り子運動させることで,速度分布を2%以下に抑えることができた。このことから,3モーションを有する本システムが,Arイオン銃を用いたエッチングにおいても有効であることを実証できた。 半導体プロセス的微細加工,すなわち,リソグラフィ技術に基づいた微細加工において,マスク材としてポジ型であるポリシロキサンを用いた。その場合,加工限界が800 nmで,これ以上の分解能が得られなかった。そこで,ネガ型を用いてドットパターンを作製したところ,40nmの分解が得られ,飛躍的に改善できた。この条件でくし型パターンを形成したところ,分解ピッチが50nmであった。これ以上の分解能を要求する場合は,更に検討が必要である。 アルミの凝着を防止するDLCの特性を利用し,カッターへの応用試験を実施し,アルミ材のみならず,銅や真鍮へも適用可能であることを見出した。また,微細構造物へのコーティング加工ができるかどうかを把握するため,直径2mm,深さ10mmの細孔内面へのコーティング試験を実施し,内側面および底面へのコーティングを達成した。
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今後の研究の推進方策 |
更なる膜の高品質化および微細加工・微細パーツへの応用に向け,主に,以下の項目について研究を実施する。また,最終年度として,これまでの成果をまとめる。 (1) 高品質DLC膜:DLC膜の形成において,基板バイアスに負電圧パルスを用いている。この場合,パルス周波数と,パルス幅もしくはデューティ比がパラメータとなる。これらの条件を変化させ,膜質との関係を把握する。 (2) 前年度において成膜チャンバから取り外し,専用チャンバに取り付けた酸素イオンシャワーエッチングシステムを設計・製作した。同システムを用いて,成膜条件(基板バイアスなど)を変えて作製したDLCに関し,酸素イオンによるエッチング速度,表面の荒れ性を数値的に明確化する。 (3) DLC膜の微細加工:DLCコートSiウエハに対し,ブラスト法を用いた微細加工の可能性を探る。その加工物が真空に耐えるかどうかを試験し,応用方針を検討する。 (4) DLC膜のスタンドアロン化:前年度まではリソグラフィ技術により,スタンドアロン化試験を行ったが,今回は潮解性基板を用いてスタンドアロン化を試みる。新たな単離技術として展開できる可能性を探る。もちろん,スタンドアロン化後,どのように保持するのか,どのような治具を使うのか,など,具体的な技術の確立,およびノウハウの確立を図る。
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