研究課題
(Ⅰ). 新モジュール構造(ユニレグ型)の高出力化および高強度構造化今年度は、Sbを単独で0.5 at%添加したものに比べて、基本熱電特性および生産性に優れたものとしてSb 0.5 at%とZn 0.5 at%を同時添加したMg2Siについて調査を行った。Sb+Znの同時添加Mg2Si 試料の373 K~873Kでのゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率の実測値から、素子寸法高5~10 mmと、断面積3×3~5×5 mm2の発電素子についてANSYS解析を行ったところ、873 Kと373 Kの想定動作温度差間で、5x5x5 mm3の素子において最大出力590 mWを得た。機械的特性に関して、平均粒径20~0.2 μmのMg2Si原料粉末を放電焼結した試料のヤング率、曲げ強度、破壊靭性値を測定し、粒子微細化によって、緻密化が容易になりヤング率の上昇みられた。また、微粒子化で高い曲げ強度を示し、平均粒径0.6 μmの場合において最も高い曲げ強度が得られた。(II). 計算科学手法によるMg2Siのn型不純物ドーピング特性第一原理計算を用いて、Mg2Siへの不純物ドープ効果を理論的に解析し、最適な不純物添加濃度を予測した。計算には、擬ポテンシャル法に基づくQuantum Espressoと、全電子計算であるFLAPW法を用いたABCAPの2種の計算コードを用いた。本年度は、Mg2Siの典型的なn型不純物であるAlとSbに着目し、構造特性(不純物サイトと格子定数)を、Quantum Espressoを用いてsuper cell計算により解析した。次に、得られた構造に基づき、ABCAPを用いて全電子計算を行い、不純物ドープ系の電子状態と輸送特性を求めた。本理論はSb添加系のSeebeck係数の実験結果を定量的に再現し、さらにSbおよびAlの最適な添加濃度の理論予測が得られた。
2: おおむね順調に進展している
本年度実施内容の(Ⅰ)新モジュール構造(ユニレグ型)の高出力化、高強度構造化については、新ユニレグモジュール構造の提案に必要な、基本発電素子形状と発電素子間をつなぐ配線金属のサイズに関して、昨年度に引き続き実施している。ユニレグ構造における発電量と熱流の関連については、これまでに有限要素シミュレーションアプローチと実発電素子および基本ユニレグ構造を作製して比較することができているため、より実装状態に近い素子の発電出力特性をシミュレーション結果と対比できるようになり、ユニレグ構造最適化への方向性を見いだせるようになった。また、ユニレグ構造の有限要素計算シミュレーションでの構造・応力解析に必要な機械特性値は、今年度実施したMg2Si粒径の制御により、ヤング率、曲げ強度、硬さ、破壊靭性値にどのような変化があるのかが評価でき、機械特性値を向上させる要素特性を抽出することができた。第一原理計算による構造およびSeebeck係数への不純物添加の影響調査については、昨年度に確立した計算体制を用いて、Al、Sb添加系の解析を行った。昨年度の課題として、super cell法は不純物濃度が低いほど計算負荷が増加する事から、実際の添加不純物の量(~数原子%オーダー)を定量的に扱う方法の検討が必要だった。そこで、super cell法でセルサイズを大きくする代わりにrigid band法を導入し、不純物添加系の輸送特性をpure Mg2Siのバンド構造を元に求めた。その結果、Sb添加系のSeebeck係数の解析は実験を定量的に再現した。今後は、実験との詳細な比較により、計算精度の評価と理論のさらなる改良を行っていく。
(Ⅰ)新モジュール構造(ユニレグ型)の高出力化、高強度構造化(1). 低電気損失化および低熱損失化:熱源からの熱フローを最小限のロスで発電素子へ導くユニレグモジュールの基本構造に対する伝熱特性の有限要素計算シミュレーション、発電チップ・モジュールの発電特性向上および実モジュール構造作製と、金属電極・配線部分における熱損失の極小化、(2).高強度構造化: 原料粉末粒径を変化させた場合の焼結プロセスの調査、および有限要素計算シミュレーションモデル化の基礎データとして、ヤング率、曲げ強度の温度依存性取得によるモジュールの機械的特性向上。(II). 計算科学手法によるMg2Siのn型不純物ドーピング特性(1).実験との比較による理論モデルの精度評価:ホール測定などの実験データと、擬ポテンシャル法による計算コード(Quantum Espresso)を用いたsuper cell計算により得られた構造特性を比較、それに基づき理論モデルの妥当性を評価、 (2).現実的な理論モデルの確立: 格子欠陥や不純物による複数のサイト占有、さらには結晶構造の不均一性が電子物性および熱電特性に及ぼす影響を調査、これを基により現実的な理論モデルを確立、(3).有望な不純物ドーパントの探索:全電子第一原理計算コード(ABCAP)を用いたゼーベック熱起電力の理論予測から、Mg2Siの高性能化を実現するn型ドーパントの原子種と添加濃度を探索する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
Journal of Electronic Materials
巻: 43 ページ: 3792-3800
10.1007/s11664-014-3165-7
巻: 43 ページ: 1620-1629
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