研究課題/領域番号 |
24246053
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
越田 信義 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50143631)
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研究分担者 |
白樫 淳一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00315657)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノシリコン / 弾道電子放出 / 電解還元 / 薄膜堆積 / 薄膜素子 |
研究概要 |
平成25年度に設定した主要課題と得られた結果を以下に示す。 A.弾道電子の還元効果による薄膜堆積機構の解析: (1)電子源動作の効果を三極系サイクリックボルタモグラムにより測定し、対象溶液のすべてにおいてホットエレクトロン注入による還元反応が生じていることを示すデータを得た。 (2) 半導体および金属の薄膜堆積過程をモデル化して薄膜堆積に関わる重要事項を把握し、通常の気相成長法に対する本方式の特長を明らかにした。 B.半導体薄膜の堆積: (1)微量のSiCl4またはGeCl4溶液をエミッタ表面に滴下する方式を本格導入し、前年度の浸漬方式と同様にSiおよびGeの薄膜が電子放出面上に均一に堆積されることを確認した。また堆積レートの理論予測を膜厚の実測値から裏付けた。 (2) 堆積した各薄膜について電子顕微鏡、光電子分光による構造・組成の解析を行い、汚染のないアモルファス薄膜が形成されていることを示した。 C.量子的構造化への展開: (1) 得られた半導体薄膜の光学的評価として行った紫外線励起ホトルミネセンス測定において室温の可視発光を観測し、量子的特性の発現を実証した。 (2) SiCl4とGeCl4との混合液を用いた実験によりSiGe薄膜の堆積を確認し、二次イオン質量分析により組成比を同定した。 D.新規薄膜堆積技術としての向上: (1) 極微量の溶液をコートした基板に電子源を近接対向させ電子照射部に薄膜を堆積するプリンティング方式の準備として、近接スペースをアクチュエータ制御する機構とグローブボックスからなる実験システムを構築した。放出電子が対向基板に到達することを予備実験で確認した。 (2) 堆積したアモルファス薄膜の多結晶化アニール、酸化処理など、薄膜素子化に向けた要素技術の基礎を固めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題の目標に対する達成度を以下に示す。 A.弾道電子の還元効果による薄膜堆積機構の解析:ナノシリコンの物性制御と弾道電子放出特性向上の検討に基づき、薄膜化対象の単体半導体および金属のイオンを含む溶液の全てにおいて、計画した電気化学測定により電子注入誘起の界面還元効果を確認した。また、対向電極なしで進行する薄膜堆積モデルの妥当性を各物質の還元電位と電子エネルギーとの相対関係から検証するとともに、本方式の薄膜堆積に関わる主要パラメータを明示するなど、基礎解析に関する設定目標を達成した。 B.半導体および金属薄膜の堆積:極微量のSiCl4、GeCl4または金属塩の溶液をエミッタ表面に滴下する実験技術を確立し、Si、Geおよび金属の薄膜を信頼性よく堆積できることを確認した。堆積レートの定量評価、薄膜の構造・組成解析についても当初計画に沿った検討課題を遂行し、予定した内容の知見を得た。特に、汚染のない薄膜形成を高感度組成分析によって実証したことは大きな進展といえる。 C.量子的構造化への展開:得られた半導体薄膜からの可視発光を観測し、量子的特性の発現を確認するという重要目標を達成できた。合わせて、SiCl4とGeCl4との混合液を用いた実験によりSiGe薄膜の堆積を確認する設定課題を遂行し、組成比を同定するなど、予期以上の前進を見た。 D.新規薄膜堆積技術としての向上:弾道電子を対向基板上の極微量溶液に照射するプリンティング方式の実験システムを実現し、放出電子がナノメートルの間隔精度で制御した不活性気体スペースをドリフトして基板に達することを確認した。また、薄膜素子化の基礎検討についても、予定した個別プロセスに見通しを得た。
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今後の研究の推進方策 |
本方式における薄膜成長機構の究明と並行して、薄膜の材料学的なキャラクタリゼーションと薄膜素子化の検討をさらに進める。 A.還元薄膜堆積法の基礎検討- (1) 薄膜堆積機構の解析:電子注入による半導体・金属イオンの還元から核生成、薄膜成長に至る微視的な過程をモデル化し、通常の気相成長法に対する特長を明らかにする。(2) 堆積薄膜のアニール・界面制御:本手法により堆積した薄膜にレーザなどによるアニールを施し、表面電子構造解析および電気特性測定によって多結晶化と界面欠陥の低減を確認する。 B.半導体・金属薄膜の評価 - (1) 薄膜の構造・物性評価:エミッタ表面に微量溶液を滴下する方式で堆積した半導体薄膜および金属薄膜について、構造・組成・堆積レートの解析と光学的・電気的測定を行い、アニール効果も含めて総合的に物性を評価する。(2) 多層膜化および不純物ドーピング:異なる溶液を用いた逐次プロセスによるSi/Geなどの超薄膜積層構造の作製、不純物ドーピングによる導電型制御を試み、素子要素として要求される基本特性を電気的測定により評価する。 C.量子的積層構造化への展開 - (1) 接合構造の形成:本手法の一貫プロセスによりMOSないしMIM構造を作製し、電気的特性の面から量子的特性の発現を検証する。(2) 半導体薄膜の積層化:Ge/Siなどの積層素子を作製し、光電子特性を評価する。 D.新規薄膜堆積技術としての向上 - (1) 対向基板上への薄膜堆積:微量溶液をコートした基板と電子源を近接対向させ、電子照射部に薄膜を堆積するプリンティング法を系統的に試行する。(2) 薄膜の評価と素子構造化:種々の基板上に堆積した薄膜の構造・物性を滴下方式の場合と同様に評価し、接合・薄膜素子の作製へ発展させる。
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