オンチップ光配線への応用に向けた小型かつ極低消費電力動作が可能な強光閉じ込め効果を用いた極低しきい値半導体薄膜DFBレーザの実現および高速動作化を目的としている。オンチップ光配線の実現に向けた半導体光源には1 mA以下の極低駆動電流動作と同時に、チップ内で信号を伝送する上で十分な光出力強度と直接変調帯域が要求される。昨年度までに、10 Gb/s以上の直接変調帯域を有する半導体薄膜レーザの構造設計を行うと共に、電流注入駆動による自己発熱の影響を理論的に解析した。 本年度は、ファブリ・ペロー共振器構造の半導体薄膜レーザを試作し、共振器長350μmでしきい値電流 2.5 mAの室温連続動作を得ると共に、その外部微分量子効率の共振器長依存性から、内部量子効率が従来型半導体レーザと全く遜色ない75%であることを明らかにした。 つぎに、表面に30 nmの深さの回折格子を有する半導体薄膜分布帰還レーザを試作し、共振器長50μmでしきい値電流 0.23 mAの極低電流室温連続動作を得ることに成功した。この素子において、40 nmの広い波長幅で高い反射率を有すること、および回折格子による単一波長動作を観測した。さらに、共振器の中央部に1/4波長分の位相シフトを導入した位相シフト半導体薄膜分布帰還レーザを作製し、共振器長30μmでしきい値電流 0.28 mAの極低電流室温連続動作を得ることに成功した。また、このレーザに受動光導波路を介して光検出器を集積した素子を初めて試作し、その光検出動作を実現した。 さらに、低しきい値・高効率動作を目的として考案した分布反射型半導体薄膜レーザを初めて実現し、共振器長30μmでしきい値電流 0.25 mAの極低電流室温連続動作、およびその前端面からの光出力が後端面からの出力の約7倍強く、光出力の一方向への取り出し効率が極めて高い良好な特性を実現した。
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