研究課題
(1)As2S5ガラスを使ったPCFの作製に成功し、1から5.5μmを超えるスーパーコンティニューム(SC)光の発生に成功した。これは、カルコゲナイドPCFでこれまでに観測された最も長波長に伸びたSC光である。(2)コアガラスとしてAsSe2系ガラスおよびクラッドガラスとしてAs2S5系ガラスを用いることにより、ハイブリッドPCFが作製可能であることを明らかにし、カルコゲナイドハイブリッドPCFの実現に初めて成功した。また、ハイブリッドPCF構造と波長分散特性との相関を詳細解析した。その結果、4穴構造において3波長で零分散かつ低分散な分散特性が実現できることを明らかにした。(3)直線偏波に偏光した中赤外SCを発生させるため、楕円コアを有する偏波保持型のテルライトPCFの実現を進め、その作製に初めて成功した。偏波制御されたソリトン発生およびSC光の発生を検証した。(4)ハイブリッドPCF用のテルライトガラスおよびフォスフェイトガラスを開発して、テルライトガラスコア、フォスフェイトガラスクラッドのハイブリッドPCFの作製に初めて成功した。このPCFの波長分散と構造との相関を詳細に検討した結果、1から2μmに亘り低分散にできるPCF構造があることを見出した。その構造を持つPCFにより1200nmの帯域の光パラメトリック増幅が可能であることを明らかにした。このような広帯域光パラメトリック増幅は石英ファイバでは実現できず、テルライトPCFの特徴である。(5)テルライトガラスとカルコゲナイドガラスよりなる全固体フォトニックバンドギャップファイバによるフォトニックバンドギャップの動的制御が光励起で200nm以上可逆的に可能であることを明らかにした。また、同全固体フォトニックバンドギャップファイバの作製に成功し、その特性検証を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
(1)偏波保持型のPCFの実現に成功し、SCの偏波制御も可能になった。 (2)As2S5テーパーPCFの作製に成功し、5.5μmを超えるSC光の発生に成功した。 (3)ハイブリッドPCFの作製法において、従来のキャスティング法によるPCF構造(穴開き構造)を実現するだけでなく、ガラスロッドに穿孔してPCF構造を実現するという新手法の開発にも成功し、構造制御の自由度を上げられた。これによって、各種のハイブリッドPCFの作製が可能となり、その実現に成功した。今後のハイブリッドPCFの波長分散制御の更なる進展が期待できるようになった。(4) コアガラスとしてAsSe2系ガラスおよびクラッドガラスとしてAs2S5系ガラスを用いることによりカルコゲナイドガラス製の波長分散の制御性の優れたハイブリッドPCFの実現に初めて成功した。(5)特にテルライトハイブリッドPCFの実現では、これまでにないコア、クラッド素材の開発に成功し、実際にハイブリッドPCFが実現可能であることが実証できた。また石英ファイバでは実現できない超広帯域光パラメトリック増幅が可能であることを明らかにした。これは、広帯域光パラメトリック増幅や発振、それに波長変換技術の新たなる展開に寄与するものである。
(1)広帯域SC実現のためのPCFの基本構造が明らかにし、波長分散制御も可能であることも解明した。さらなる広帯域化には、閉じ込め損失を十分考慮したPCF構造設計が重要になる。そのためには、多種のPCFを連結した構成も必要になると考えられる。多段構成の励起法も検討する。 (2) PCFの透過特性の向上も重要な課題となると考えられる。ファイバ作製装置の電気炉構造等の工夫を進めてきたが、今後も作製技術の高度化が求められる。(3)励起手法の検討もさらに重要になると考えられる。また、各種波長および特性の励起光源の開発も重要になると考えられる。さらに、励起光による波長分散の動的変動を解明することが高非線形光ファイバによるSC光発生メカニズムの解明に必要になると考えられる。(4)フィラメンテイションによるSC発光がSC光発生限界を見極めるために有効である。フィラメンテイションにより各種赤外透過ガラスのSC発光特性の限界の解明を今後も続ける。(5)光信号処理への展開では、光パラメトリック増幅への応用が重要になると考えられる。テルライトハイブリッドPCFの優れたポテンシャルを明らかにできたので、今後はその特性が実現できるPCFの開発に注力する。 (6)PCFの伝送特性の動的な制御が可能であることを明らかにしたので、今後は光信号処理での展開を図る。
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