研究課題/領域番号 |
24246069
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三瓶 政一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50252599)
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研究分担者 |
衣斐 信介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10448087)
宮本 伸一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50252614)
阪口 啓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323799)
タン ザカン 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80599340)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 無線分散ネットワーク / ネットワーク情報理論 / 階層型制御ネットワーク / ネットワーク制御理論 / 分散型制御システム |
研究概要 |
本研究課題は,(課題1) 制御遅延を考慮したネットワーク情報理論の構築,(課題2) 多次元信号処理を用いた階層型多重アクセス通信路の高度化,(課題3) 分散制御アルゴリズムの構築,(課題4) 機械学習を活用した制御アルゴリズムの構築,(課題5) ネットワーク制御理論の構築,(課題6) 階層型電力制御ネットワーク試作システムの構築,(課題7) 研究成果の社会還元,という7つの課題で構成されている.各課題の具体的成果は以下のとおりである. 課題1では,ネットワーク情報理論における通信路容量を信号点拘束容量で捉えた上で,Slepian-Wolfの定理に基づいた時間相関を考慮した情報源符号化定理を構築した.課題2では,複数のアンテナを用いた階層型多重アクセス通信路の通信路容量を導出し,通信ネットワーク設計手法を確立した.課題3では,微分ゲーム理論を適用して需要側においてエネルギー管理を行う手法を確立した.なお本課題については,京都大学の山本高至准教授に連携研究者として協力していただいた.課題4では,センサ情報の相関に起因する知識の確率的集約の誤差を抑制を目的として,相関の影響を考慮したメッセージパッシングアルゴリズムを検討した.課題5では,来年度からの本格的検討を前に,電力ネットワークの需要家側である下位層において電力使用に優先順位を設定し,上位からの規定を拘束条件として下層の電力使用を制御することで,結果として本課題が目的とすることを実現できる見通しを得た.課題6では,本研究課題の実証を行うための階層型電力制御ネットワークの設計と,一部の機能の実験的検討を行った.課題7については,シドニー大学への訪問や,国際会議での招待講演の発表など,平成25年度以降,国際会議(国際ワークショップ),論文特集号の編集,教科書執筆等を実現するための準備を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は本プロジェクトの1年目であるため,研究組織間の連携を密にするための会議システム構築や,海外研究者も含めた連携のための海外組織訪問や国際会議における発表など,精力的に活動した.その意味から,学術的な研究の組織化としては順調なスタートが切れた.研究者間のミーティングは3回実施され,本プロジェクトが抱えている問題点を明確化するとともに,制御関係の技術者を毎回招待し,通信技術者と制御技術者のものの考え方などについて確認することができた.各課題に対しては,ほぼ予定通りに進んでいる.現在の進捗は,本プロジェクトに登録されている研究者が無線通信技術者であることもあって,まだ,通信プロトコルに近い考え方に基づいたものが多い.ただ,制御理論と通信理論のギャップは,これまで長年,あまり交流がなかった二つの分野の融合領域であるので,このギャップの解消が,これからの大きなチャレンジ分野であろう.制御ネットワークを階層化し,各層が自律的制御に基づいて目的を果たし,上位層には制御量を抑制した形でメッセージを伝える技術は,自律分散を核としてスケーラビリティのある制御ネットワークを構築したいという本プロジェクトの理念をに合致しているので,この考え方が,今後,本プロジェクトにおける基本的考え方になるであろう.今後,この考え方をコアにして,技術の多様化を進める予定である.制御プロトコルや制御ネットワークに対してどのように切り込んでいくのかといった点については,来年度以降の重要な課題であろう.特に,通信プロトコルと制御プロトコルにおける考え方の根本的な差異については,従来のような,「通信には誤りや遅延があるのに対して制御ではそれは想定していない」ということに留まるのではなく,それをどのように配慮し,乗り越えるのかが重要と考えられる.それについては,今後の検討課題である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では,本プロジェクトの理念として,制御ネットワークを,下位層が自律的制御によって局所的最適化を進めるとともに,上位層は,より広い範囲で起きる低速な最適化を担当するプロトコルを提案した.この考え方は,電力ネットワークなどのように,多数の制御対象が存在する制御ネットワークにおいてスケーラビリティのある制御を実現する有効手段と期待できる.また,この構図をフルに生かすことで,より精度の高い自律分散制御,より高速な制御,より柔軟でスケーラビリティへの対応などが可能になると期待できる. 来年度以降は,この考え方をコアにして,技術の多様化を進める予定である.特に,各課題では,どのような方向性を持って課題解決を行うのかを明確化する必要がある.その意味から,制御プロトコルや制御ネットワークに対し,情報通信における無線リソース制御などの経験を生かしてどのように切り込んでいくのかといった点が,来年度以降の重要な課題であろう. また,通信プロトコルと制御プロトコルの境界領域を開拓するという目標においては,単に,ビット誤り率や遅延の有無だけが両プロトコル間の相違なのではないという考え方の下で,より広い視点,特に通信プロトコルと制御プロトコルが融合するという観点を持って,この分野の開拓と充実化を目指す予定である.
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