研究課題/領域番号 |
24246079
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
丸山 久一 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (30126479)
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研究分担者 |
有川 太郎 独立行政法人港湾空港技術研究所, その他部局等, その他 (00344317)
藤間 功司 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (00546187)
水谷 法美 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10209760)
林 和彦 横浜国立大学, その他の研究科, その他 (20334633)
田中 泰司 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (40377221)
渡辺 健 公益財団法人鉄道総合技術研究所, その他部局等, 研究員 (40450746)
細田 暁 横浜国立大学, その他の研究科, 准教授 (50374153)
千々和 伸浩 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80546242)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 津波 / 流体 / 構造工学・地震工学 |
研究概要 |
2011年東北地方太平洋沖地震における橋梁の被害調査を行い,被害の概要を整理し,被害の特徴を明らかとした。調査の結果,浸水域には1799橋の橋梁が存在し,そのうち252橋の橋梁が流失や移動・変形を伴う被害を受けていたことが明らかとなった。統計的な分析の結果,浸水深が大きくなるほど被害率が大きくなる傾向にあった。抗力と摩擦抵抗力の比較により,桁移動に対する安全率を求めたところ,浸水深から簡易的に流速を推測することで,被害の有無をある程度説明できることが示された。 陸前高田市で桁の流失被害を受けた沼田跨線橋を対象として,1/10スケールの模型実験を実施した。実規模で6~7m/sの流速であっても流れの中では,流失が生じなかった。また,流れの中では橋桁には負の揚力が発生し,その結果,摩擦抵抗力も大きくなるので,必ずしも流速が大きいほど安全率が小さくなるわけではないことが実験的に示された。このような傾向は流体解析においても再現できることが確認された。一方,孤立波を受けた場合には,橋梁前面の下部の圧力が大きくなり,大きな揚力が発生する結果,橋梁は上方に持ち上げられ,流失した。これらの実験事実は解析によっても高精度で再現されたことから,沼田跨線橋では何らかの波が衝突し,桁流失の被害が生じたと推定された。 固液連成解析により,小型模型橋梁の孤立波による流失現象の再現計算を実施したところ,橋梁の密度が1.0g/cm3の場合の流失現象を再現することができたが,コンクリートのような大きな密度を持った橋梁の流失現象の再現には至らず,次年度以降の課題として残った。 AEMを用いた構造解析により,津谷川橋梁の橋脚損傷の再現計算を実施したところ,流速から推定される津波による抗力によって,実際の被害状況と同様の損傷が橋脚に発生した。また,橋脚を補強することによって,橋桁の流失が防げたことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
津波被害を受けた橋梁のデータベース化は,2012年度内に予定通り完了した。また,データベースを活用して既往のマクロ評価式の検証も進めており,ある程度の有用性を確認した。マクロ評価に関しては当初の計画以上に作業が進んだものの,マクロ評価の推定精度に限界があることが明らかとなった。 津波による橋梁への揚力評価については,沼田跨線橋をモデルとした大型模型実験および橋桁の流失メカニズム検討用の小型模型実験を当初予定どおり実施し,必要なデータを取得した。特に,沼田跨線橋を対象とした大型模型実験では,流れの中での負の揚力の発生や,孤立波による流失現象を再現することに成功し,計画以上の成果を得ることができた。流体解析による再現計算も進めており,おおむね順調に進んでいる。一方,移動状況も含めた再現計算を行うための固液連成解析については,コンクリートのような大きな密度をもった橋梁での流失現象の再現には至っておらず,やや遅れている。 津谷川橋梁の橋脚損傷の再現解析については,当初はFEMを用いる予定であったが,AEMを採用することで,破壊後の変形も評価できるようになった。橋脚増厚補強による効果も確認され,おおむね順調に進んでいる。次年度以降は,流体力との連成解析を実施する予定である。 このように,当初計画と比較して多少の増減や変更はあるものの,全体的にはおおむね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
橋梁流失のマクロ評価については,津波流速の推定精度の影響を確認する必要があることが判明しているため,津波遡上・伝搬解析を実施し,各橋梁位置での流速履歴を計算する。その上で,流速の情報が高精度に得られる場合のマクロ評価式の推定精度を検証する。 沼田跨線橋の流失には,孤立波のような波が大きく寄与していたことが明らかとなったので,どのような波が作用したのか明らかにするために,津波伝搬・遡上解析を実施する。橋梁への波力を直接計算するために,大・中領域では平面二次元解析を,最小領域では3次元解析を行う。 流れの中での作用力のマクロ評価に向けて,流速や橋の形状をパラメータとした感度解析を実施する。また,孤立波による作用力のマクロ評価に向けても波の特性や橋の形状をパラメータとした感度解析を実施する。 固液連成解析による橋桁の移動現象の再現計算については,引き続き実現象の再現に向けて,特に入力波の再検討も含めて作業を行う。 橋脚の補強による効果の検証方法を確立するために,AEMと流体解析を連成させた解析を実施する。津谷川橋梁を対象として,どのような補強を行えば効率的に流失を防げるのかについて,具体的な方策を提案する。
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