研究概要 |
陸前高田地区の橋梁被害分析を実施し,以下のような分析結果が得られた.まず気仙川を遡上する津波を捉えた多方向からの写真映像資料より,津波の先端部は概ね2mの波高であった.しかしながらこの段波は桁には直接作用しないことが確認された.その後,徐々に水位が上昇する定常流状の流れが継続して作用した結果,桁が流出したことが明らかとなった.画像および数値解析より秒速6m程度の流速が桁に作用したと推定され,時刻歴で作用力,抵抗力を算出したところ作用力が抵抗力を上回り,水平力のみで流出したことが明らかとなった.ついで釜石地区の橋梁被害分析を実施し,以下のような分析結果が得られた.まず甲子川を撮影した映像資料に基づく津波特性の分析の結果,遡上する津波の流速は平均で秒速4.3m,最大でも秒速5.3mであり,東北沿岸部6地域で測定された41データの平均秒速5.7mに比して遅い.また映像分析と数値解析から推定した流速を用いた矢の浦橋の流出評価の結果は4,929kNであり,浮力を考慮した抵抗力6,568kNを下回る.このことから,矢の浦橋が流出を免れたのは,津波の流速が遅かったためと考えられる.最後に孤立波性状の津波による作用力の実験を実施し,以下のような結果が得られた.まず孤立波の波高および桁形状をパラメータとした実験を行い,桁に作用する特性について検討した.その結果,孤立波性状の津波において,水平作用力は波高を関数とする静水圧の80%に近似すること,および鉛直力も同様に波高を関するとする静水圧の関数で近似されることが明らかとなった.
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